【花札の由来】11月はなぜ”柳に男”だった?|小野道風の前の図柄、時雨と雨に追われる人の動き、笠時雨について。

※本稿は史料の記述に基づく整理に加え、筆者による季語・和歌を手がかりにした推測(読み)を含みます。断定ではなく、一つの解釈としてまとめています。

花札の11月「柳」といえば、いま一般的なのは「小野道風」です。
でも、地方花札や古い系統をたどると――先にいたのは、雨の中を走る男でした。
参考:(二)「武蔵野」の模写、越後花札 – 日本かるた文化館 日本かるた文化館 

この札の、絵の主題はこうです。

この札が描いているのは、
雨の景色そのものというより、雨に追われる人の動きです。
冷たい時雨(ときに雷)に追われ、笠でしのぎながら走る旅人
——この一場面を、霜月の札として読むことができます。

目次

この札は「霜月の雨(時雨)と、移動する人」を一枚にまとめた札として読める

柳に男参考:京都大石天狗堂 

11月=霜月の札として読もうとすると、見えてくる要素はだいたい3つです。

見どころは3つ

柳(やなぎ)
時雨(しぐれ)風の雨の気配(+雷のスピード感)
笠・草鞋(わらじ)=旅人の装備

この3つが揃うと、札の読みが一気に「霜月っぽく」なります。

時雨は“多用される季語”だから、霜月の札の読みの芯に置ける

“時雨”は、 秋の終わり〜冬の初めに降る、短い通り雨のことです。

時雨(しぐれ)は、俳句・和歌の世界でかなり頻繁に扱われてきた題材です。

季語としても「初冬」の代表格で、
朝時雨・夕時雨・小夜時雨・村時雨・北時雨・片時雨・時雨雲・時雨傘……のように、
時雨の“姿”を細かく言い分ける語が多く立ちます。きごさい歳時記

季節の語の解説では、
万葉集の「雨のつく言葉」を拾うと「雨」に次いで「時雨」が多い、という指摘もあり、
古い時代から“雨の代表語彙”として育ってきたことが分かります。JapanKnowledge

こうした背景があるので、霜月(初冬)を描く札を読むとき、
「時雨」を中心に置くのはかなり安定した方針になります。

時雨は人の動きを表せる雨

時雨は、ただの雨ではなく――
「降ったかと思うと晴れ、また降りだす」ような、移ろいやすい通り雨として説明されます。きごさい歳時記
その性質は、景色を静かに眺める雨というより、外にいる人間の体を急かす雨に近い。

だからこそ、11月柳札のような「笠」「移動」「走る」といった要素を、
霜月の側へ引き寄せて読む“芯”として、時雨が働きます。

1)小野道風の前に「雨中を走る男」が主役だった

全国の地方花札には、11月柳札として「雨中を走る男」が描かれ、カス札に古歌が入るものもあります。
それが江戸時代の花合わせ札(武蔵野系)の図像を踏まえた流れだ、と説明されています。
参考:日本かるた文化館

さらに、日本かるた文化館側でも、
11月柳が「時雨柳(しぐれやなぎ)」と呼ばれること、
そして古い段階では“嵐の中、柳の木の下を走る男”として理解されていた流れが紹介されています。


笠と草鞋があると、「笠時雨」まで一気に繋がる

この札が“旅人の札”に見える最大の理由が、笠と草わらじです。
雨が降ってきたから、笠でしのぎながら走ってる。

ここに、冬のことばとして強いのが 「笠時雨(かさしぐれ)」

笠時雨:笠に降りかかる時雨
コトバンク

つまり「笠に当たる時雨」そのものが名詞化されてる。
旅の情景として、強い。

そしてこの「笠時雨」は、芭蕉の句が初出例として挙げられます。

此海に草鞋捨てん笠しぐれ
熱田皺筥物語 芭蕉
芭蕉 「時雨」の句(1) | 季節のことば

熱田の桐葉(とうよう)亭に草鞋を脱ぐ。
(句意) 熱田に舟から上がって、時雨の音を笠に響かせながら、この桐葉亭にお世話になります。
芭蕉 「時雨」の句(1) | 季節のことば

“走る男”の札は、この文脈にかなり綺麗に乗ります。
「走ってる=移動してる」札だから、笠時雨が刺さります。


時雨に柳がある理由

ここは「柳=11月の植物ではなく、柳は歳時記だと春の季語です。

しかし、柳と雨での句があるため、その紹介していき、二つのつながりを見てこうと思います。

まず、芭蕉にも柳と雨を結びつけた有名句があります。 きごさい歳時記

八九間空で雨降る柳かな
(芭蕉)
「八九間」の巻、解説 – suzuroyasyoko ページ!

この句は、柳の枝から落ちる雫を「空で雨が降るみたいだ」と見立てる発想です(=柳が“雨を降らせる”側になる)。 山梨県立大学

さらに、「初時雨」と柳を直接つなぐ例として、加賀千代女にこんな一句があります。

柳には雫みじかしはつ時雨
(千代女)
千代女について|千代女の里俳句館|白山ミュージアムポータルサイト

“初時雨の雫”と、柳の枝葉が自然にセットで詠まれている。
つまり少なくとも俳句・季語の世界では、時雨×柳の取り合わせ自体は成立する
千代女について|千代女の里俳句館|白山ミュージアムポータルサイト


まとめ:霜月の柳は、「雨そのもの」じゃなく“雨に追われる人間”の札だった

11月の柳札は、

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この記事を書いた人

今はゲームシナリオを書いている者です。最近社内DXアプリ開発も楽しい。
花札がとても好き。アナログゲームを嗜む脚本家、小説家、人狼もマダミスも好き。

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