札は、12か月それぞれに草花が割り当てられ、各月4枚ずつで季節を表す遊び札です。
季節語の整理では秋を初秋・仲秋・晩秋に分け、仲秋は旧暦8月を指します。
8月札の「芒に月」は、
十五夜の月見を描いた札です。
8月の「タネ札」の記事:芒に雁はこちら

「芒に月」は、名月の静けさを一枚に圧縮した札
」は中秋の札?芒の歴史・月見の習俗・「坊主」と呼ばれる理由まで-1024x538.webp)
見どころは大きく2つ。
芒(すすき/尾花)
秋の野を成立させる“草”として、
暮らしの中でも繰り返し出てくる
月(名月)
十五夜として行事になり、
「見上げる行為」ごと文化になった
8月「芒に月」は“中秋の名月”の札として読みやすい

中秋の名月(十五夜)は、
旧暦8月15日の月。
仲秋=旧暦8月の真ん中。
芒が月見の“場”を作り、
月が秋の中心を決める。
この二つが揃うと、8月札の空気が一気に固まります。
参考:お月見の由来と歴史|貴族の宴から豊作を願う庶民の行事へ | あなゆかし
「旧暦8月」と「新暦9〜10月」のズレ

「旧暦8月」と聞くと、
「お月見って9月か10月じゃない?」と思う人もいるはずです。
それ、感覚としては正しいです。
旧暦は月の満ち欠けを基準にした暦で、
旧暦8月15日は 今の暦(新暦)だとだいたい9月中旬〜10月上旬 にずれ込みます。

だから“中秋の名月=旧暦8月”なのに、
カレンダーの印象は9月・10月になる。
このズレが、芒に月の札をいちばん分かりにくくしているところでもあります。
すすきが重要になる理由(資料で裏どりする)
月見は、月だけじゃない。
すすきと供え物が揃って、初めて“月見の場”になる。
それを「行事の作法」として、ちゃんと書き残している資料があります。
江戸後期の風俗をまとめた『守貞謾稿』の八月十五夜(十五夜)では、江戸の月見についてこう言い切ります。
では、江戸の月見-1024x538.webp)
「花瓶に必ず芒を挟して、これを供す。」
月見を成立させる構成要素として扱われています。
だからこそ、花札の8月光札が
すすき+月だけで、月見の場が成立します。
「坊主(ぼうず)」と呼ばれる理由(そして、芒のカスは?)
8月の「芒に月」は、地域や流派によって「坊主」と呼ばれます。
」と呼ばれる理由(そして、芒のカスは?)-1024x538.webp)
これ、いちばん素直な理由は見た目。
札の下側にある黒い山のかたまりが、
剃った坊主頭みたいに見えるから。
Q:芒のカスも坊主読みなの?
→ 基本は、呼ばない(無難なのは呼ばない)でOKです。
解説や会話で「坊主」と言ったら、だいたいこの光札を指します。
芒のカスまで坊主と呼ぶと混乱しやすくなります。
俳句・和歌で読む「芒に月」
1)与謝蕪村

山は暮れて 野は黄昏の 芒かな
山が夕暮れで暗くなっていき、
野原一面も黄昏(たそがれ)の色に沈んでいる。
――その中に、芒(すすき)が見える。
2)小林一茶

名月や 明けて気のつく 芒疵
名月に夢中だった夜は気づかなかった。
明けて落ち着いたら、手元に(あるいはどこかに)「芒の疵」があった。
3)藤原良経(新古今・秋歌上)

行く末は 空もひとつの 武蔵野に 草の原より 出づる月影
地平線まで草の野が続いて、空と地が溶けるみたいに見える。
「草の原から月が出る」――芒に月の“札の構図”そのもの。
まとめ:芒に月は、月見の空気を一枚にする
仲秋=旧暦8月。
そして中秋の名月(十五夜)は、旧暦8月15日の月。
だから「芒に月(山に月)」は、
月見を描いた光札として読みやすい。
すすきが月見の場を作る(稲穂の代わり/依代/魔除け)。
その結果、「すすき+月」だけで十五夜の空気が立ち上がる。
そして、札の黒い山が坊主頭に見えることから
「坊主」と呼ばれる。
ただし“坊主”は基本この光札を指し、芒のカスまで坊主とは呼ばない方が安全。
芒に雁が“秋が進む”札なら、
芒に月は“秋が深まる”札。
同じ8月のすすきなのに、
ここまで温度が変わるのが面白いところです。
よくある質問(Q&A)
- 「芒に月」ってなんて読むの?
-
基本は「すすきに つき」です
- 花札の8月札「芒に月」は何を描いた札?
-
旧暦8月15日の「十五夜(中秋の名月)」の月見を描いた光札です。芒(すすき)が“月見の場”を作り、月が秋の中心を決める構図になっています。
- 「中秋の名月」って9月のイメージだけど、旧暦8月なの?
-
はい。中秋の名月(十五夜)は「旧暦8月15日」です。旧暦は月の満ち欠け基準なので、新暦だとだいたい9月中旬〜10月上旬にズレます。
- 「仲秋」っていつのこと?
-
季節語の整理では秋を初秋・仲秋・晩秋に分け、仲秋は「旧暦8月」を指します。つまり8月札は“仲秋”の札として読みやすいです。
- すすき(芒/尾花)は、月見でなんで重要?
-
月だけではなく、すすきと供え物が揃ってはじめて「月見の場」が成立するからです。江戸の月見の作法では、花瓶に芒を挿して供えることが定番として記述されています(例:守貞謾稿の八月十五夜の記述)。
- 「芒に月」は、なぜ“坊主”って呼ばれるの?
-
光札の下側にある黒い山のかたまりが、剃った坊主頭みたいに見える――という見た目由来がいちばん分かりやすい説明です。会話で「坊主」と言ったら基本この光札を指します。
- 芒のカス札も「坊主」って呼ぶの?
-
基本は呼ばない(呼ばないのが無難)でOKです。「坊主=芒に月(光札)」で通す方が混乱しません。
- 「芒に月」は“中秋の名月の札”として見ていい?
-
見てOKです。仲秋=旧暦8月の真ん中、そして十五夜=旧暦8月15日。月見の中心に置ける札なので、読みとして素直です。
- 「芒(すすき/尾花)」って同じもの?
-
ほぼ同じものとして扱って大丈夫です。芒(すすき)の穂を「尾花(おばな)」と呼ぶ言い方があり、和歌や季語では尾花表記もよく出ます。
- 俳句や和歌で読むと、芒に月のどこが面白い?
-
「草の原から月が出る」という発想が、そのまま札の構図に重なります。たとえば 藤原良経(新古今和歌集)の歌は“草の原から出づる月影”で、芒に月の画面づくりと相性がいいです。
また 与謝蕪村 や 小林一茶 も、芒と名月の「熱量の差(夜に夢中→朝に気づく)」を詠んでいて、札の静けさの補強になります。 - 「芒に月」って「山に月」って呼ぶこともある?
-
呼びます。絵柄が“すすき野+月”である一方、見た目の印象が「黒い山+月」にも見えるので、「山に月」系の呼び名が併存します。
花札の謎シリーズ!8月札『芒に月』(山に月) - 「芒に月」は“満月”なの?
-
多くの図柄は「十五夜(中秋の名月)」のイメージに寄せているので、読みとしては満月寄りでOKです(※ただしメーカーや図柄の差はあり得ます)
- 旧暦8月=新暦8月じゃないの?
-
旧暦は月の満ち欠け基準なので、新暦の月とはズレます。
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-
月見は「月+すすき(+供え物)」で“場”が成立する行事として語られます。花札の8月光札が「すすき+月」だけで空気を作れるのは、この構造が背景にあるからです。
- 「芒に月」って花札だけの言葉?
-
花札の8月札の名称として知られていますが、近年は椎名林檎の楽曲名として見かけて検索する人もいます。
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