毎日こいこい。花札の解説を少しずつ更新中。

【花札の由来】2月「梅に鶯」はなぜ早春の札?春告鳥・梅の花の意味を図柄から読む

花札は、12か月それぞれに花や草木が割り当てられ、
各月4枚ずつで季節を表す遊び札です。

2月札は早春の予兆
寒さの中に”春が混ざりはじめる瞬間”を、
梅と鶯でぎゅっと圧縮した月です。

※図柄の「直接の起源(これが元ネタ!)」は断定できない部分があるため、本記事では“資料で確認できる意味(象徴)”を土台に、自然な読みを提示します。

目次

2月の札は「早春の気配」を一枚に圧縮している

2月札の核は、だいたい次の2つです。


寒さのなかで先に咲く=「春の入口」


春先から鳴きはじめる=「春を告げる声」

たとえば戸栗美術館の解説でも、
梅は「他の花に先立って春にいち早く花を咲かせる」、
鶯は「春先から鳴きはじめ」「春告鳥(はるつげどり)の異名を持つ」と整理されています。

つまり2月札は、

咲く(見える春)

鳴く(聞こえる春)

で「早春」を完成させている、と読むとスッと入ります。

梅が象徴する「見える春」──雪の白さと、花の白さ

梅は、冬の終わりに“まず咲いてしまう”花です。だからこそ、早春の象徴になりました。

ここに、早春らしい空気を一発で立ち上げる和歌があります。

雪降れば 木毎に花ぞ咲きにける いづれを梅と 分きて折らまし
――紀友則(きのとものり)

雪が降ると、木々が一斉に花咲いたみたいに見える。
さて、その中でどれを梅と見分けて折ろうか──という歌。古今和歌集の冬歌として伝わります。
参考:三鷹古典サロン裕泉堂/吉田裕子

※「木毎(きごと)」は「木ごとに(どの木にも)」の意味。
あわせて「梅=木+毎」という字の分解にかけた文字遊び、と解説されることがあります。 
参考:JapanKnowledge

梅は“見える春”

鶯が象徴する「聞こえる春」──春告鳥と「初音」

鶯は、姿よりも先に声で春を知らせる鳥として親しまれてきました。
辞典でも「春告鳥(はるつげどり)=鶯の異名」と説明されています。

鶯は“聞こえる春”。

2月の札は「見える春」と「聞こえる春」

花札の2月が上手いのは、ここ。
梅は“見える春”、鶯は“聞こえる春”。
目と耳で、春を完成させてしまう組み合わせなんです。

小さな暦コラム:啓蟄・春分と、2月札の「動き出す春」

2月札の空気は、二十四節気で言うと
「啓蟄(けいちつ)」〜「春分(しゅんぶん)」の手前にぴったり重なります。

啓蟄:冬ごもりしていた虫が地上に出てくる頃
春分:太陽が春分点を通過し、昼夜の長さがほぼ等しくなる頃

まだ寒いけど、春が動きはじめる感じ。
それが梅と鶯の「早春の気配」と同じ感覚です。

「梅に鶯」ってどういう意味?ことわざなの?

「梅に鶯」
意味:取り合わせのよいもの、美しく調和するもの
また 「仲のよい間柄」 のたとえ

参照:コトバンク

任天堂の解説ページでも、
「梅に鶯」は取り合わせの良い二つのもの/仲の良い二人の間柄を意味することわざだと紹介されています。

戸栗美術館でも、梅と鶯を組み合わせた「梅に鶯」は古来好まれ、絵画や歌でも数多く扱われてきた、と整理されています。

つまり花札の2月は、
“早春の定番セット(お約束)”を描いた札、と見た方が安定です。

「梅に鶯じゃなくて、梅に目白では?」という話

呼び名は「梅に鶯」で定着(文化の型)
実際の梅に来る小鳥は鶯ではなく、目白だという話題が起こりやすい(諸説)
花札は“記号としての季節”を描く札

「梅に鶯ではなくて、梅に目白では?」とよく聞きます。
大石天狗堂でも「鶯ではなく目白説」がよく言われる、と紹介されています。

加島美術のコラムを見る限り、タイトルが「鶯」にも関わらず「目白」を描いている作品が多くあるようです。

数多くある鶯作品の大部分でウグイスは鳥類額的に誤って描かれてしまっている。

色の誤り:黄緑に描くと、それは鶯というより目白の体色に近い
模様の誤り:眉斑(まゆはん)を太く描くと、鶯ではなくムシクイ類っぽくなる

そのような描き手は、実物のウグイスの姿を知らず、眉斑を太くはっきり描いた先人の作品を元に、さらに太くはっきり描いてしまったのだろう。

参考:加島美術のコラム

そのため、花札は写実よりも “梅+鶯=早春”という文化的な型(=取り合わせの良さ・風情)を描いたもの。もしくは、誤って目白を鶯として描いてしまったもの、と考えるのが自然です。

札の上の赤い塊は何?──「雲(霞)」のデザイン(飾り)です

花札で札の上部に描かれている赤い塊は、基本的に雲(霞)として説明されています。
任天堂のデザイナー山田孝久さんの解説でも「この赤いかたまりは雲」とされ、札の上下(向き)を判断する目印にもなる、という話が出てきます。

なぜ赤い雲が入っているのか。
ここはデザイン史的な説明がわかりやすくて、花札の図像変化を扱う解説では、
和歌(文字)を省いたことで生まれた“空白”を埋めるために綿雲(雲)を置いたのでは、という見立てが紹介されています。

紋標「梅」のカス札に青色の霞が描かれていたが、関東花札では赤い綿雲が描かれた。
また、紋標「薄」のカス札にも空に浮かぶ雲が描かれている。
和歌を消したので出現した図柄の空白の部分がいかにも寂しげなので、綿雲を配したのであろうか。
参考:日本かるた文化館


さらに時代によっては、手札で少しずらしただけでも高点札だと識別できるように、赤い雲が加えられた例もある、とされています。

赤短の文字は、ここではさらっと

2月には赤短(文字入りの短冊札)もあります。
この文字は「あかよろし」と読まれる――というところだけ、ここでは押さえておきます。

読み間違いが起きやすい理由や、
赤短・青短がこいこいでどれだけ強いか(点数・集め方のコツ)は、
短冊札の記事にまとめました。

まとめ:2月「梅に鶯」は“春の入口”を圧縮した札

2月札「梅に鶯」は、

梅=他の花に先立って咲く「見える春」
鶯=春告鳥としての「聞こえる春」
「梅に鶯」=取り合わせの良いもの/調和のたとえ

を、1枚で成立させた札です。

よくある質問

花札の2月の鳥は、本当にウグイスなんですか?

呼び名としては「梅に鶯」で定着しています。
一方で、実際の梅に来る鳥として目白が話題になりやすいこと、また絵画表現の“鶯の描かれ方”には誤りが起きやすい点も指摘されています(諸説)
花札は写実というより、季節を伝える記号として読むのが安定です。

「梅に鶯」ってどういう意味?

辞典では「取り合わせのよいもの」「美しく調和するもの」、また「仲のよい間柄」のたとえと説明されています。

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この記事を書いた人

今はゲームシナリオを書いている者です。最近社内DXアプリ開発も楽しい。
花札がとても好き。アナログゲームを嗜む脚本家、小説家、人狼もマダミスも好き。

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