花札の色は、型紙+ハケで色を置く(カッパ摺り)方式です。
色を重ねる途中で紙が少し動くので、わずかな色ズレが出ることがあります。
ここから、そのしくみを順番に説明します。
工程の流れ(全体像)
花札の「線 → 色」の基本は、この順番です。
大きく分けると、①印刷側を作る → ②土台側を整える → ③印刷側を使って色を置く の3ブロックです。
① 印刷側(型・スタンプ側)を作る作業
- 版木を作る(線の印刷用の木の板)
- 骨刷り:版木で輪郭線だけ刷る(黒い線の下絵)
② 印刷される側(土台側)を作る作業
- 下処理:じん糊+ミョウバンを土台の紙に塗る
③ 印刷側を使って、土台に色を置く作業
- カッパ摺り(合羽摺り):型紙+ハケで色を順番に重ねる
④ 仕上げ(必要な場合)
- 金銀などを入れる/乾かす/切って札に仕立てる
この記事では 1〜4 を中心に説明します。
まずは用語を整理(ここだけ分かれば読めます)
版木(はんぎ)
木に図柄を彫った印刷用の板です。花札ではまず「輪郭線だけ」を刷るのに使います。
骨刷り(ほねずり/骨摺り)
版木を使って、紙に黒い輪郭線だけを刷る工程名です。色入れ前の下絵を作ります。
原紙/型紙(げんし/かたがみ)
色を入れたい形に切り抜いた「穴あきの紙」。いわゆるステンシルです。
ハケ(刷毛)
筆みたいに線を描く道具ではなく、型紙の上から色をポンポン置くための道具です。
じん糊+ミョウバン
色入れ(カッパ摺り)の前に、色をのせる側の紙(表紙)に塗る下処理の液。
色がにじみにくく、こすれて落ちにくくなるようにして、仕上がりを整えます。
まず結論:花札の色は「塗り絵」ではない
花札の色は、筆で自由に塗っていく「塗り絵」方式ではありません。
基本はこうです。
穴あきの紙の型(型紙/原紙)を当てて、ハケで色を“置いていく” =カッパ摺り
つまり、ステンシルで色を入れる方式。
だから同じ図柄をたくさん作れます。
① 印刷側(型・スタンプ側)を作る作業
ここは「同じ絵を量産するための準備」です。
1. 版木を作る(線の印刷用の木の板)
最初に、輪郭線(黒い線)をたくさん刷れるように、木の板に線の図柄を彫ります。
これが版木(はんぎ)です。
ここで大事なのは、版木は「型紙を作る木」ではなく、
輪郭線を紙に刷るための“線のスタンプ板”だということです。
2. 骨刷り:版木で輪郭線だけ刷る(黒い線の下絵)
次に、その版木を使って紙に輪郭線だけを刷ります。
これが骨刷りです。
この時点では色はまだ入っておらず、紙は
「線だけ入った下絵(ぬり絵の線だけ版)」みたいな状態です。
② 印刷される側(土台側)を作る作業
ここは「色がきれいに乗る紙の準備」です。
3. 下処理:じん糊+ミョウバンを土台の紙に塗る
骨刷りが終わったら、次は下処理です。
ここでやる じん糊+ミョウバン は型紙に塗るものではなく、色をのせられる側(花札の表紙の紙)に行う工程です。
どこに塗る?
- 型紙(穴あきの紙)ではなく、刷られる側の紙(表紙)に塗ります。
何のため?
カッパ摺りは、型紙を当ててハケで色をポンポン置くので、土台がそのままだと
- 色が紙に吸われすぎて、フチがボヤける(にじむ)
- 乾いたあと、こすれで粉っぽく落ちる(色落ち)
- 色を重ねたとき、下の色が動いたりムラが出たりする
…みたいなことが起きやすいです。
そこで、じん糊で“色が定着しやすい下地”を作り、ミョウバン液で“下地を引き締めて安定させる”、という役割分担になります。
じん糊(じんのり)とは?
じん糊は、ざっくり言うと 水で溶いて使う“のり”です。
紙や布の表面にうすい膜を作って、あとから乗せる色(顔料)が
- こすれて落ちにくくなる(定着しやすい)
- 紙に吸われすぎてボヤけにくくなる(にじみにくくなる)
…みたいに、仕上がりを安定させる方向に働きます。
イメージは 「色を乗せる前の下地のり」です。
ミョウバン(明礬)とは?
ミョウバンは、もともとは 水に溶ける結晶(粉のようなもの)で、使うときは 水に溶かして”ミョウバン液(溶液)”にします。
働きとしては、
- 表面を“引き締める”
- にじみや崩れを抑える方向に寄せる
というイメージが近いです。
(単体で主役というより、下地を安定させる補助役として登場することが多いです)
③ 印刷側を使って、土台に色を置く作業
ここがいわゆる「色入れ」です。
4. 色入れ=カッパ摺り(合羽摺り):型紙+ハケで色を順番に重ねる
下処理ができたら、色入れです。
花札の色入れ工程は、カッパ摺り(合羽摺り)と呼ばれます。
やり方はシンプルです。
- 色を入れたい形に切り抜いた 型紙(原紙) を紙に重ねる
- ハケで顔料をポンポン置く(または軽くこすり込む)
- 穴の開いている部分だけ色がつく
- 次の色の型紙に替えて、また色を置く
カッパ摺りは、筆で描くのではなく、
型紙で形を決めて、色を“置く”方法です。
何色もあるなら、型紙も何枚もある?
基本は 「1色につき1枚」のイメージです。
図柄の都合で、同じ色でも場所が分かれている場合は、1色でも複数枚になることがあります。
なぜ色がズレることがあるの?
手作り花札では「色ズレ」を見かけることがありますが、単に手元が狂ったからだけではありません。
理由は大きく2つあります。
置き直すからズレる(手作業のズレ)
型紙は色ごとに置き直すので、どうしてもわずかなズレの可能性はあります。
紙が伸び縮みするからズレる
骨刷りから色入れまでの間に、紙は濡れたり乾いたりします。
水彩で紙が波打つのと同じで、紙は少し動きます。
その結果、特に端(隅)のほうで、型紙と紙がわずかにズレることがあります。
この「ズレ」は避けにくいので、昔から「それも手摺り花札の味」と考えられてきました。
④ 仕上げ(必要な場合)
ここから先は作り方や流派でいろいろですが、例としては
金銀を入れる/乾かす/切って札に仕立てる、などがあります。
今回は「線 → 下処理 → 色入れ」のしくみを理解することを優先して、深掘りはここまでにします。
まとめ
花札の色は、筆で塗り絵のように塗っているのではなく、
穴あきの型紙(原紙)を当てて、ハケで色を置く=カッパ摺り(合羽摺り)で作られます。
その前に、版木で輪郭線を刷る(骨刷り)、そして土台の紙を下処理(じん糊+ミョウバン)して、色がきれいに定着するように整えます。
さらに、工程の中で紙が少し伸び縮みするので、わずかな色ズレが出ることもあり、そこが手作り花札の味になっています。
出典参照元
日本かるた文化館:(六)骨刷りと色入れ
https://japanplayingcardmuseum.com/2-1-4-6-miikecarta-woodprinting-colouring/
京都表装協会:表具の材料(沈糊=じんのり)
https://www.kyoto-hyousoukyoukai.jp/menu/about/zairyo/
武蔵野美術大学 造形ファイル:礬水液(どうさえき)
https://zokeifile.musabi.ac.jp/%E7%A4%AC%E6%B0%B4%E6%B6%B2/
愛媛県西条市:手漉き和紙の出来るまで(ドウサ引き)
https://www.city.saijo.ehime.jp/site/mizunorekishikan/lineup6-2-5-1.html
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