花札の絵柄を「色」で考えたい人の記事です。
花札の図柄が多く作られた 江戸後期〜明治前期(だいたい18世紀後半〜19世紀末) ごろの色を抑えています。
浮世絵(木版画)の色材が 1700〜1900 でどう変わったかをまとめた研究があり、花札の色を考える時に重要な情報なので参考にしております。
参考:『「浮世の絵」の色彩— 18〜19世紀の日本の浮世絵木版画に対する非破壊分析と、東洋の材料理解に向けた新たな知見 — 英文を翻訳ツールを使って読んでいます。
「使われた色一覧」の読み方(大事な前提)
ここで言う「使われた」は、
“当時の木版画で使われた色材として、研究で名前が挙がる” という意味です。
「その色しか使えない」ではありません。
木版画の世界では、伝統的な天然色材(染料・顔料)に加えて、19世紀以降は輸入顔料(例:プルシアンブルー)が入り、さらに明治期に合成染料が段階的に広がっていった……という流れが確認できます。
江戸後期〜明治前期に「使われた色」一覧(時代範囲付き)
研究資料は色材名で整理されることが多く、画面の色味(RGB/RGBA)としては載っていません。
そこで本記事では、当時「使われた」と言える色材を、言葉で分かる形にまとめます。
参考:Colours of the « images of the floating world ». non-invasive analyses of Japanese ukiyo-e woodblock prints (18th and 19th centuries) and new contributions to the insight of oriental materials
🖤 黒:まず“形”を決める色
- 墨(sumi):輪郭線・主線の基本。
木版画の色材の議論でも、黒(墨)は土台として扱われます。
役割:輪郭線・文字・締め色(絵を読ませる骨格)
ひとこと:黒は「面を塗る色」より先に、まず“線で形を立てる”ための色として強い。
時代ラベル:江戸前期〜明治(ずっと現役)
※ここは、花札の「まず線を出す(骨摺り)」という感覚とも相性がいい、という話につながります
🤍 白:白は2種類ある
白には大きく2ルートあります。
1) 紙の白(刷らない白)
役割:ハイライト・白い物体・余白
ひとこと:「塗らない」ことで白になる。和紙の肌=白として成立する。
時代ラベル:江戸前期〜明治(ずっと現役)
2) 胡粉の白(白を“足す”白)
役割:雪・強い白・紙の白との差を作る
ひとこと:同じ“白”でも、胡粉で摺ると「白さの質」が変わる。紙の白と描き分けができる。
時代ラベル:江戸〜明治(使い分けで登場)
アダチ版画研究所の解説では、
「着物の白=和紙の肌地のまま(絵具なし)」に対して、
「雪の白=胡粉を摺って白さの差を作る」
という使い分けが、具体例つきで説明されています。
❤️ 赤:赤は“系統が多い”のが普通
木版画の研究では、伝統パレットの代表例として赤系が複数挙がります。
🌺 紅花(beni / safflower)系
役割:華やかさ・肌や布・差し色
ひとこと:伝統パレットを代表する赤。
時代ラベル:江戸〜明治前期(伝統側の主役)
🧱 鉛丹(red lead)系
役割:はっきりした赤・朱寄りの面
ひとこと:無機系の赤として研究側で言及される代表格。
時代ラベル:江戸〜明治前期(伝統側)
そして明治期になると、合成染料が段階的に入ってきます。
🧪 合成染料の赤〜ピンク(明治で増える)
役割:派手さ・鮮烈な赤味(それまでと“色の強さ”が違う)
ひとこと:明治期に段階的に入ってくる新顔。
時代ラベル:1860s〜1900にかけて導入が進む
参考:Viewing Japanese Prints
ロザニリン(rosaniline / magenta):1864 に錦絵で使われ始めた、最初期の合成染料として整理されています。
(後年)エオシン(eosin) など、合成染料の導入が進むのは1860〜1900で「段階的・選択的だった」とする研究があります。 参考:npj Heritage Science
💛 黄:明るい面を作る“万能ポジション”
研究で伝統パレットとして挙がる黄には、たとえばこんな系統があります。
🍯 藤黄(gamboge)
役割:明るい面・暖色の土台・”白っぽさ”の補助
ひとこと:伝統パレットの黄として代表的に挙がる。
時代ラベル:江戸〜明治前期(伝統側)
🟡 石黄(orpiment)
役割:濃い黄・金味寄りの黄
ひとこと:無機系の黄として言及される代表格。
時代ラベル:江戸〜明治前期(伝統側)
黄は「明るい面」を作るのに便利です。
💙 青:ここが「時代の境目」を作る
🟦 藍(indigo)
役割:基本の青・陰影・紫や緑の材料
ひとこと:伝統パレットの中核。
時代ラベル:江戸〜明治(ずっと現役)
🧊 プルシアンブルー(Prussian blue)
役割:新しい強い青(それまでより“深く・強い”青の世界)
ひとこと:19世紀に入ってからの代表的な新規顔料として言及される。
時代ラベル:19世紀〜(輸入顔料として登場)
💚 緑:単独というより“混ぜて作る色”
役割:草木・装飾・季節感
ひとこと:研究の整理では、基本は 青+黄の組み合わせで緑を作る発想が強い。
時代ラベル:江戸〜明治(混色で継続)
木版画の色材の説明では、青+黄の組み合わせで緑という発想がはっきり出てきます
(例としてプルシアンブルーと黄系の組み合わせなど)。
参考:Viewing Japanese Prints
💜 紫:伝統の紫/明治の新しい紫
伝統的には、赤系と青系の重ね・調整で紫に寄せることが多い。
🎎 伝統:赤+青で寄せる紫
役割:気品・夜・影・差し色
ひとこと:赤系と青系の重ねで紫を“作る”発想が自然に出る。
時代ラベル:江戸〜明治(混色で継続)
🧪 明治:ロザニリン(rosaniline / magenta)
役割:新しい紫味(鮮やかさが違う)
ひとこと:1864に使われ始め、最初は青と組み合わせて紫寄りにした整理がある。
時代ラベル:1864〜(明治の新顔)
明治の“新しい紫”として、1864 ロザニリンが最初は青と組み合わせて紫寄りに使われた、という整理があります。
参考:Viewing Japanese Prints
🟫 茶/🩷桃/🩵水色:花札の“見た目の色味”に直結する枠
役割:質感・肌・地面・空気感・可愛さ
ひとこと:このへんは「研究論文の色材名」より、花札側の工程で語られる“使う色”が分かりやすい。
日本かるた文化館の手作り花札工程では、カッパ摺りの色として 黄色/茶色/水色/桃色/紫色などが挙げられている。
時代ラベル:少なくとも“花札制作の説明として現代に伝わっている実用色”
明治以降に増える“新しい色”の目印
ざっくり「色の世界が広がる合図」だけ置いておきます。
- 19世紀:輸入顔料(例:プルシアンブルー)で青の表現が強くなる
- 1860年代〜:紫系の新しい色が話題になる(ロザニリンなど)
- 1870年代以降〜:合成染料の赤〜ピンクが段階的に混ざっていく(例:エオシンの整理)
「いきなり全部置き換え」ではなく、少しずつ混ざっていくのがポイントです。
まとめ:この時代の「色の空気感」
江戸後期は、天然色材+一部無機顔料のパレットが中心。
19世紀以降、輸入顔料(プルシアンブルー)が入る。
明治に入ると、合成染料が“いきなり全部置き換え”ではなく、段階的に混ざっていく。 Nature
花札工程で「色が絞られやすい」理由
花札(とくに地方札・量産寄り)の色数が絞られやすい理由は、ざっくりこれです。
- まず 骨摺り(線で形を作る)
- その後に カッパ摺り(型紙=ステンシル)で色を重ねる
- 色が増えるほど、型紙が増え、手間も増え、ズレ管理も増えやすい
だから現場の感覚としては、
「少ない色で、ちゃんと読める絵にする」方向へ寄りやすいです。
オマケ:花札の色図鑑(花札・画像から抽出した近似色)
印刷・撮影・保存形式でブレるので、“参考程度のコード”として使ってください。
🖤 黒(輪郭・締め色)
色コード:#0A0B0A(墨っぽい黒)/#0A0B09(黒ベタ寄り)
役割:形を読ませる骨格。画面を締める。
花札でよく見る置き場:輪郭線・文字・黒い葉/幹のベタ・影の最暗部。
時代ラベル:江戸〜明治(ずっと中心。まず“線”から始まる色)
🤍 白(白は2ルートで考える)
1) 紙の白(刷らない白)
色コード(紙感):#E1E1E1
役割:余白/抜き。明るさの土台。
花札でよく見る置き場:カード地(背景)・白い抜き(波や雪の抜き・花びらの抜き)・月の白。
時代ラベル:江戸〜明治(ずっと現役)
2) “足す白”(胡粉の白のイメージ)
色コード(強い白の目安):#FFFFFF
役割:紙の白より「白さの質」を強くしたいときの白。
花札でよく見る置き場:白を強調したいモチーフ(雪・霧・装飾の白)を“目立たせたい”ところ。
時代ラベル:江戸〜明治(使い分けで登場しやすい白)
❤️ 赤(短冊・印・華やか担当)
色コード:#B21817(主役の赤)/#460A0A(暗い赤・締めの赤)
役割:視線を集める主役色。意味(印・短冊・祝祭感)を持たせる。
花札でよく見る置き場:短冊(赤短など)・日章(丸い赤)・人物の衣装・ポイントの差し色。
時代ラベル:江戸〜明治(赤は常に中心。明治以降は鮮烈な赤系も増える)
💛 黄(明るい面担当)
色コード:#C4C24C(黄)/#C6C452(金味寄りの黄)
役割:白を足さずに“明るい面”を作る。形を読みやすくする。
花札でよく見る置き場:燕の腹・月のまわりの明るさ・花の芯・装飾のハイライト。
時代ラベル:江戸〜明治(明るさ担当として便利。少色数でも機能しやすい)
💙 青(影・水・夜の空気)
色コード:#33566A
役割:冷たさ・奥行き・陰影。画面に深さを足す。
花札でよく見る置き場:水・夜の空気・影の色・黒一色だと重い所の“逃げ”。
時代ラベル:江戸〜明治(19世紀に強い青が入って世界が広がる、が基本の役割は不変)
💚 緑(葉・季節感)
色コード:#446739
役割:生命感・季節感。赤や黒の強さを中和する。
花札でよく見る置き場:葉・草・枝のニュアンス(緑が入ると“植物”として読みやすくなる)。
時代ラベル:江戸〜明治(単独緑というより、青黄の感覚で扱われやすい)
💜 紫(花の主役・気品・夜の色)
色コード:#332839
役割:高級感・夜の気配・花の主役感。
花札でよく見る置き場:藤・菖蒲などの花の主役色/黒の影に“色”を足す場所。
時代ラベル:江戸〜明治(伝統は重ねの発想、明治は鮮やかな紫味も増える)
🟫 茶〜橙(動物・木・土のリアル)
色コード:#77351D(濃茶)/#9B4526(橙茶)/#C28437(薄茶)
役割:自然物の説得力。温度と素材感。
花札でよく見る置き場:鹿・猪などの動物/幹・地面/秋っぽい面。
時代ラベル:江戸〜明治(“自然物のリアル”担当として安定)
◽ グレー(点描・霞・中間トーン)
色コード:#CECECE(薄グレー)/#878787(中グレー)
役割:白と黒の間を作る。印刷っぽい質感(点描)や霞。
花札でよく見る置き場:点描の背景・薄い影・白場のにじみの表現。
時代ラベル:江戸〜明治(黒白だけだと硬い所を“和らげる”役)
まとめ(色の役割だけ覚えるなら)
- 黒:形を決める(線・締め)
- 白:抜き(紙)/強調(足す白)
- 赤:主役(短冊・印・視線誘導)
- 黄:明るい面(燕の腹・月まわり)
- 青:影・水・夜(奥行き)
- 緑:葉(季節感)
- 紫:花の主役(気品)
- 茶:動物・木(土台のリアル)
- 灰:点描・霞(中間)
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