【花札の由来】2月「梅に鶯」はなぜ早春の札?春告鳥・梅の花の意味を図柄から読む

この記事の要点

本記事の結論は、花札2月札「梅に鶯」は、梅による「見える春」と、鶯による「聞こえる春」を組み合わせて、早春の気配を一枚に圧縮した札だ、というものです。

先に結論

  • 「梅に鶯」は、梅の花と鶯の声で早春を表す2月札。
  • 梅は「見える春」、鶯は「聞こえる春」として読むと、札の季節感が分かりやすい。
  • ただし図柄の鳥や赤い装飾の意味は、写実よりも季節を伝える文化的な記号として整理する。
さらに詳しく見る
  • 扱う札:花札の2月札「梅に鶯」。図柄には梅、鳥、赤い雲・霞のような装飾が描かれる。
  • 基本の意味:梅は寒さの中で他の花に先立って咲く「春の入口」、鶯は春先に鳴きはじめる「春告鳥」として読める。
  • 記事の主張:2月札「梅に鶯」は、梅の花で春を見せ、鶯の声で春を聞かせる、早春の象徴的な組み合わせである。
  • ことわざとしての意味:「梅に鶯」は、取り合わせのよいもの、美しく調和するもの、仲のよい間柄のたとえとしても使われる。
  • 鳥についての注意点:呼び名は「梅に鶯」で定着しているが、実際の梅に来る鳥や絵画表現では、目白ではないかという話題も起こりやすい。花札は写実よりも、季節を伝える文化的な記号として読むのが安定する。
  • 赤い塊について:札の上部にある赤い塊は、雲・霞のデザインとして説明される。札の上下を判断する目印や、図柄の空白を埋める装飾としても考えられる。
  • サザノノザサによる整理:本記事では、2月札を「梅=見える春」「鶯=聞こえる春」ととらえ、花札の図柄を早春の気配を伝える季節記号としてまとめている。
  • 資料上の注意点:図柄の直接の起源は断定せず、辞典・美術館解説・任天堂の解説・花札図像の解説などで確認できる意味を土台に、自然な読みとして提示する。

本記事では、サザノノザサが参照資料をもとに、2月札「梅に鶯」を「見える春」「聞こえる春」「季節を伝える文化的な取り合わせ」という観点から整理しています。図柄の直接の起源を断定するものではなく、確認できる意味を土台にした読み解きです。

アバン|補講前の一幕

正解なのに、まだ終わらない。

2月は?

月狩 玄
月狩 玄
梅に鶯の花札
2月の札
酒々井 景寿
酒々井 景寿

梅に鶯!

……正解。

月狩 玄
月狩 玄

と言いたいが。

月狩 玄
月狩 玄
酒々井 景寿
酒々井 景寿

ひっかけ?

引っかかったのは
描いた側だ。

月狩 玄
月狩 玄
梅に鶯、です。
次は「梅に鶯」
けれど、花札に描かれた鳥は本当に鶯なのか。

この記事の前提

花札は、12か月それぞれに花や草木が割り当てられ、
各月4枚ずつで季節を表す遊び札です。

2月札は早春の予兆。寒さの中に“春が混ざりはじめる瞬間”を、梅と鶯でぎゅっと圧縮した月です。

※図柄の「直接の起源」は断定できない部分があるため、本記事では 資料で確認できる意味を土台に、自然な読みを提示します。

目次

2月の札は「早春の気配」を一枚に圧縮している

2月札の核は、だいたい次の2つです。

酒々井 景寿
酒々井 景寿

これは
梅に鶯
だが?

否定はできない

月狩 玄
月狩 玄

2月の構成要素

……で、
主な構成要素は
この3つ

月狩 玄
月狩 玄


寒さのなかで先に咲く=「春の入口」


春先から鳴きはじめる=「春を告げる声」

どちらも
「春の始まり」だ

月狩 玄
月狩 玄

つまり2月札は、

咲く(見える春)

鳴く(聞こえる春)

で「早春」を完成させている、と読むとスッと入ります。

   

ちなみに、
戸栗美術館の解説でも
「春の入口」と伝えられている。

月狩 玄
月狩 玄

梅は「他の花に先立って春にいち早く花を咲かせる」、
鶯は「春先から鳴きはじめ」「春告鳥(はるつげどり)の異名を持つ」と整理されています。
戸栗美術館の解説

2月は「節分」の中の「立春」

酒々井 景寿
酒々井 景寿

2月は
冬だろ…?

春だ。

あとで
旧暦の勉強をしろ

月狩 玄
月狩 玄

けど、
現代人には
2月が春の訪れとは
分かりにくいよな

月狩 玄
月狩 玄
酒々井 景寿
酒々井 景寿

2月で想像するのは
節分ぐらいだしな

節分は
季節の節目ってだけだ。
立春の前日と言え。

月狩 玄
月狩 玄

節分(セツブン)とは? 意味や使い方 – コトバンク

酒々井 景寿
酒々井 景寿

立春…?
春の始まりってことか?

……気づいたか

月狩 玄
月狩 玄

昔の人はこの花、この鳥をどう捉えていたか。

酒々井 景寿
酒々井 景寿

…で、
梅が冬から春って言う
証拠はあるんですか

……紀友則

月狩 玄
月狩 玄
酒々井 景寿
酒々井 景寿

ひさかたの?

春の終わりの句だろ、それ

月狩 玄
月狩 玄

梅が象徴する「見える春」──雪の白さと、花の白さ

梅は、冬の終わりに“まず咲いてしまう”花です。だからこそ、早春の象徴になりました。

梅は“見える春”

こういう句が
あるんだ

月狩 玄
月狩 玄

雪降れば 木毎に花ぞ咲きにける いづれを梅と 分きて折らまし
――紀友則(きのとものり)

読めるか?

月狩 玄
月狩 玄
酒々井 景寿
酒々井 景寿

雪が降ると、
木に花が咲く。

つまり、
雪が白い花に見えるのか。

合っている。
続けてくれ

月狩 玄
月狩 玄
酒々井 景寿
酒々井 景寿

不安寄りに
「梅を折りたいけど、
雪と分けて折るには
どうすればいい?」
みたいな感じか

ましの意味 – 古文辞書 – Weblio古語辞典

そうだな
専門家の翻訳も置くか

月狩 玄
月狩 玄

雪が降ると、木々が一斉に花咲いたみたいに見える。
さて、その中でどれを梅と見分けて折ろうか──という歌。古今和歌集の冬歌として伝わります。
参考:三鷹古典サロン裕泉堂/吉田裕子

それと、梅という字は
「木」と「毎」を合わせると
出来る。

月狩 玄
月狩 玄
酒々井 景寿
酒々井 景寿

つまり、
文字遊びか

※「木毎(きごと)」は「木ごとに(どの木にも)」の意味。
あわせて「梅=木+毎」という字の分解にかけた文字遊び、と解説されることがあります。 
参考:JapanKnowledge

そうだ

月狩 玄
月狩 玄

なぜ、この句が春の入口と分かるのか

酒々井 景寿
酒々井 景寿

これが
「春の入口」の
象徴になるのが、分からねえ

質問です。
雪は、どの季節に降りますか

月狩 玄
月狩 玄
酒々井 景寿
酒々井 景寿

だろ~?
馬鹿にしやがって

なら、花と言われて
浮かぶ季節と言えば?

月狩 玄
月狩 玄
酒々井 景寿
酒々井 景寿

はい、問題。
この句の季節を答えよ

月狩 玄
月狩 玄

雪降れば 木毎に花ぞ咲きにける いづれを梅と 分きて折らまし
――紀友則(きのとものり)

酒々井 景寿
酒々井 景寿

の間だろ?

天才、
そういうことだ。

月狩 玄
月狩 玄
酒々井 景寿
酒々井 景寿

完全に乗せられた気分だ…。

紀友則の他の梅の句

余談だが、紀友則は
梅の花で
別の句も残している。

月狩 玄
月狩 玄

君ならで 誰にか見せむ 梅の花 色をも香をも 知る人ぞ知る
紀友則

クリックすると、翻訳内容などが見れます。

   

酒々井 景寿
酒々井 景寿

えーっと、
愛しい貴方だけで
他には誰に見せましょうか、いえ見せるわけがない。
梅の花、この色も香りも。
知る人だけが知るのだから?

酒々井 景寿
酒々井 景寿

整えると、
貴方以外にこの梅の花を
見せることはありません。

この色もこの香りも
分かる方にしか分からないのですから

あなたでなくて 誰に見せましょう 梅の花
色の素晴らしさも香りの素晴らしさも あなただけが分かるのですから

春の和歌 「君(きみ)ならで 誰(たれ)にか見せむ」  古今和歌集 紀友則(きのとものり) – M&Cメディア・アンド・コミュニケーション

鶯が象徴する「聞こえる春」──春告鳥と「初音」

酒々井 景寿
酒々井 景寿

鶯が春なのはわかる。
「春告げ鳥」って
言うぐらいだからな

鶯は、姿よりも先に声で春を知らせる鳥として親しまれてきました。
辞典でも「春告鳥(はるつげどり)=鶯の異名」と説明されています。

鶯は“聞こえる春”。

2月の札は「見える春」と「聞こえる春」

花札の2月が上手いのは、ここ。
梅は“見える春”、鶯は“聞こえる春”。
目と耳で、春を完成させてしまう組み合わせなんです。

小さな暦コラム:啓蟄・春分と、2月札の「動き出す春」

これは余談だが
2月札の季節は
啓蟄」~「春分」の手前だ

月狩 玄
月狩 玄

啓蟄:冬ごもりしていた虫が地上に出てくる頃
春分:太陽が春分点を通過し、昼夜の長さがほぼ等しくなる頃

冬だが、
春が動き始める様子だな

月狩 玄
月狩 玄

「梅に鶯」ってどういう意味?ことわざなの?

梅に鶯は、
花札以外でもよく使う。

それこそ、
ことわざにあるんだ。

月狩 玄
月狩 玄

「梅に鶯」
意味:取り合わせのよいもの、美しく調和するもの
また 「仲のよい間柄」 のたとえ

参照:コトバンク

任天堂の解説ページでも、
「梅に鶯」は取り合わせの良い二つのもの/仲の良い二人の間柄を意味することわざだと紹介されています。

戸栗美術館でも、梅と鶯を組み合わせた「梅に鶯」は古来好まれ、絵画や歌でも数多く扱われてきた、と整理されています。

つまり花札の2月は、
“早春の定番セット(お約束)”を描いた札、と見た方が安定です。

梅と鶯の色々な句

梅と鶯の句を載せておく

月狩 玄
月狩 玄

折りつれば 袖こそ匂へ 梅の花 ありとやここに 鶯の鳴く
古今和歌集 0032 よみ人知らず
古今和歌集 0032 – ことばを旅する

春たてば花とや見らむ白雪のかかれる枝に鶯の鳴く
古今和歌集 春上より
春の訪れを知らせる鳥、「鶯」を歌ったおすすめ和歌5選を古今和歌集より紹介

花の香を風のたよりにたぐへてぞ鶯誘ふしるべにはやる
古今和歌集 春上より
春の訪れを知らせる鳥、「鶯」を歌ったおすすめ和歌5選を古今和歌集より紹介

春に白い花と書いてあれば、
ほぼ梅と訳してOKだ。

月狩 玄
月狩 玄
酒々井 景寿
酒々井 景寿

それに、
花の色は桜
花の香は梅
書いてなくても訳せる奴か!

そうだ。
だから、
直接梅と書いていない句も
入れている

月狩 玄
月狩 玄

「梅に鶯じゃなくて、梅に目白では?」という話

いらすとやで「うぐいす」と検索してみた

酒々井 景寿
酒々井 景寿

……で、
鶯じゃない問題は
いつ解決するんだよ

いらすとやで、
うぐいすとひらがなで
検索して欲しい

月狩 玄
月狩 玄
酒々井 景寿
酒々井 景寿

検索したら
「梅とメジロ」って
言われたんだけど

そう、
俺たちが見ている鶯は
メジロにかなり近いんだよ

月狩 玄
月狩 玄

ちなみに、
カタカナで
「ウグイス」と調べると
と梅にウグイスも
出してくれるからな

月狩 玄
月狩 玄
酒々井 景寿
酒々井 景寿

わざわざ、
梅にのせているあたり、
俺たちは馬鹿と煽られている

というより、
ウグイスには梅乗っているのが
正常運転で、
言葉としては正しいんだよ

月狩 玄
月狩 玄

なんでイラストが「メジロ」なの?

酒々井 景寿
酒々井 景寿

でも、
なんで「ウグイス」なのに
「メジロ」書いたんだ?
言葉遊び?

「ウグイス」は声しか聴けないんだよ

だから、
梅の近くによくいる鳥を
「ウグイス」と
勘違いする人が続出

月狩 玄
月狩 玄
酒々井 景寿
酒々井 景寿

んなことあるのか?

かなりよくある。
ネットがない時代は
伝言ゲームだ。

月狩 玄
月狩 玄
酒々井 景寿
酒々井 景寿

つまり、伝言ゲームが
公式的に伝わった結果か

「梅に鶯ではなくて、梅に目白では?」とよく聞きます。
大石天狗堂でも「鶯ではなく目白説」がよく言われる、と紹介されています。

加島美術のコラムを見る限り、
タイトルが「鶯」にも関わらず
「目白」を描いている作品が多くあるらしい。

月狩 玄
月狩 玄
酒々井 景寿
酒々井 景寿

それを見て、
更に「うぐいす」が増えたのか

数多くある鶯作品の大部分でウグイスは鳥類額的に誤って描かれてしまっている。

色の誤り:黄緑に描くと、それは鶯というより目白の体色に近い
模様の誤り:眉斑(まゆはん)を太く描くと、鶯ではなくムシクイ類っぽくなる

そのような描き手は、実物のウグイスの姿を知らず、眉斑を太くはっきり描いた先人の作品を元に、さらに太くはっきり描いてしまったのだろう。

参考:加島美術のコラム

とはいえ、
この札の名前は
「梅に鶯」だ。

和歌にも鶯が使われているから
鶯を描きたかった。
なら、メジロと扱う方が失礼だ

月狩 玄
月狩 玄

ということで、
うぐいすと言う名前で
このメジロを扱っていく

月狩 玄
月狩 玄

呼び名は「梅に鶯」で定着(文化の型)
実際の梅に来る小鳥は鶯ではなく、目白だという話題が起こりやすい(諸説)
花札は“記号としての季節”を描く札

花札は写実よりも “梅+鶯=早春”という文化的な型(=取り合わせの良さ・風情)を描いたもの。もしくは、誤って目白を鶯として描いてしまったもの、と考えるのが自然です。

酒々井 景寿
酒々井 景寿

…なら、最初の答え
梅に鶯で合ってね…?

札の上の赤い塊は何?──「雲(霞)」のデザイン(飾り)です

酒々井 景寿
酒々井 景寿

梅の周りにある
赤い塊ってなんだ?

雲、らしいな。
公式の回答あるから
まとめておく

月狩 玄
月狩 玄

花札で札の上部に描かれている赤い塊は、基本的に雲(霞)として説明されています。
任天堂のデザイナー山田孝久さんの解説でも「この赤いかたまりは雲」とされ、札の上下(向き)を判断する目印にもなる、という話が出てきます。

なぜ赤い雲が入っているのか。
ここはデザイン史的な説明がわかりやすくて、花札の図像変化を扱う解説では、
和歌(文字)を省いたことで生まれた“空白”を埋めるために綿雲(雲)を置いたのでは、という見立てが紹介されています。

紋標「梅」のカス札に青色の霞が描かれていたが、関東花札では赤い綿雲が描かれた。
また、紋標「薄」のカス札にも空に浮かぶ雲が描かれている。
和歌を消したので出現した図柄の空白の部分がいかにも寂しげなので、綿雲を配したのであろうか。
参考:日本かるた文化館


さらに時代によっては、手札で少しずらしただけでも高点札だと識別できるように、赤い雲が加えられた例もある、とされています。

赤短の文字は、ここではさらっと

2月には赤短(文字入りの短冊札)もあります。
この文字は「あかよろし」と読まれる――というところだけ、ここでは押さえておきます。

読み間違いが起きやすい理由や、
赤短・青短がこいこいでどれだけ強いか(点数・集め方のコツ)は、
短冊札の記事にまとめました。

まとめ:2月「梅に鶯」は“春の入口”を圧縮した札

2月札「梅に鶯」は、

梅=他の花に先立って咲く「見える春」
鶯=春告鳥としての「聞こえる春」
「梅に鶯」=取り合わせの良いもの/調和のたとえ

を、1枚で成立させた札です。

  

     

よくある質問

花札の2月の鳥は、本当にウグイスなんですか?

呼び名としては「梅に鶯」で定着しています。
一方で、実際の梅に来る鳥として目白が話題になりやすいこと、また絵画表現の“鶯の描かれ方”には誤りが起きやすい点も指摘されています(諸説)
花札は写実というより、季節を伝える記号として読むのが安定です。

「梅に鶯」ってどういう意味?

辞典では「取り合わせのよいもの」「美しく調和するもの」、また「仲のよい間柄」のたとえと説明されています。

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