観測記録:エリザ・レフト
通常のプロフィールではなく、観測者による生体記録として整理したもの。 本人の自己認識と、人間側から見た危険性には大きな差がある。
BIOLOGICAL RECORD
人間と共存する、
末恐ろしい上位存在。
記録対象、エリザ・レフト。吸血鬼を自称する少年型の個体。 銀灰色の髪、赤い瞳、尖った耳、小さな翼を持つ。
外見上は頼りなげで儚げな印象を与えるが、人間からすれば明らかに上位存在に分類される。 本個体は、自身を「人間と最も共存している吸血鬼」のひとりとして認識している。
人間に対する愛着は強く、従者に生活・仕事・家族関係を許容し、危機に際しては保護を行う。 ただし、その愛着は観察・育成・所有・利用を含む。
本個体は、自分より強い存在がいくらでもいることを前提に、自身を弱いものと認識している。 一方で、人間側から見た場合、その手はあまりにも広く、深く、末恐ろしい。
人間を愛している。人間から見れば、恐ろしいほどに。
本人なりには、かなり誠実な共存
エリザは人間を愛している。従者に暮らしを与え、仕事を任せ、家族を持つことも許す。 危うい時には助けるため、本人は自分ほど人間と共存している吸血鬼もいないだろうと思っている。
人間から見れば、末恐ろしい存在
エリザは血を吸い、従者を持ち、必要な時には人生に口を出す。 愛しているからこそ、終わりまで手放さない。その手は人間の一生に深く届く。
愛でることは、眺めるだけではない
育てる。救う。使う。おちょくる。必要な時には呼び戻す。 エリザにとって愛でるとは、命の終わりまで関わり続けることでもある。
表情差分
頼りなげな印象、穏やかな案内役、ご主人様としての顔。 エリザの「守られるべき存在」と「人間から見た上位存在」のズレを表情で見せる。
笑顔
穏やかに案内し、人間を愛していると語る顔。
不安
自分は弱いと心から思っている顔。
目閉じ
世界の終わりと再生を眺めてきた、静かな顔。
ちょっと怒り
従者へ口を出す、ご主人様としての顔。
君の命は保証する。だから、僕を守ってね。
エリザには、数えきれないほどの従者がいる。 彼らはそれぞれの人生を送りながら、商売、土地、噂、技術、人間関係の裏側を知っている。
エリザは、必要な時に、必要な従者から、必要な情報を引き出す。 それは命令というより、長い時間をかけて作り上げた情報網に近い。
育てる。使う。救う。おちょくる。そして、終わりまで見届ける。
エリザの従者は、男女問わず、晩年になるにつれて筋肉質で屈強な存在になっていく傾向がある。 それはエリザが、従者を精神的にも肉体的にも時間をかけて仕上げることを好むからだ。
稀に、その方向性を放棄するような個体も現れる。 けれどエリザは、それも許容している。 彼にとって大切なのは、選んだ命がどう育ち、どう終わっていくのかを見届けることでもある。
従者たちは文句を言う。振り回されることもある。 それでも、死の危機に直面した時、本来なら偶然助かっただけの場面でさえ、エリザは助けに来る。
だから彼らは、心の奥底ではエリザに依存している。 エリザもまた、人間の従者たちを愛おしく思っている。
いたいけな少年で、ご主人様。
「僕はいたいけな少年だけど、ちゃんと君たちのご主人様だから。
君たちの命は保証する。
魂を悪魔に奪わせたりなんてしない。
悪魔の魂を食べたいと言われれば、皆の力を使って、君にごちそうだってする。
ね、だから、君は僕を守ってくれるよね?
……無理なら、他の子に頼るけど」
この発言から、本個体の主従関係は「命令」だけではなく、 保証・交換・甘え・支配・従者ネットワークによって成立していると考えられる。
弱いと信じている、末恐ろしい上位存在。
エリザは、自分を絶対的な強者だとは思っていない。 自分より強い存在はいくらでもいる。だから、自分は弱い。 弱いものは守られるべきだ。
その考えは、彼にとって嘘ではない。 ただし、守られる立場が交渉材料になることも、エリザはよく理解している。
胸糞悪い生き方だと思いながら、それでも使えるものは使う。 政治とは、そういうものだから。
それでも、人間の人生に触れる彼の手は、どこまでも末恐ろしい。
選ぶ相手には、理由がある。
エリザは誰でも同じように欲しがるわけではない。 自分と似た容姿、男勝りな少女、中性的な存在に惹かれやすい。 ただし、選んだ相手を可憐なまま保存するとは限らない。
自分と似た容姿
顔立ち、雰囲気、少年めいた輪郭。 自分に似た存在を見つけると、エリザは強く惹かれる。
男勝りな少女
強気で、折れにくく、育てがいのある存在。 彼にとって、手を伸ばしたくなる命のひとつ。
中性的な存在
少年めいた輪郭や、性別の境目がやわらかい存在。 ただし、可憐なまま愛でるわけではない。 精神も身体も、時間をかけて仕上げていく。
欲しかった少年に、兄という名前を与えた。
ヴァトリ・ライトは、エリザにとって特別な存在である。 彼は捨てられていた子ではない。裕福な家に生まれた、人間の少年だった。
その父は、エリザの従者である。 エリザはヴァトリの顔を見て、どうしても彼を欲しがった。 自分と似た容姿を持つ少年を見つけたエリザは、父に頼んだ。
母は反対した。けれど父は、エリザに逆らえなかった。 あるいは、逆らいたくなかった。
そうしてヴァトリは、エリザのもとへ引き渡された。 その家には今も、毎年多額の支援金が支払われている。
ヴァトリにとってエリザは、弟であり、元主人でもある。
愛されるほど、逃げられない。
顔が似ていた少年を欲しがり、兄という名前を与えた吸血鬼。
欲しいと思った相手に、役割と名前を与える。 エリザの愛は、祝福のように見えて、契約のように続いていく。
裕福な家から引き渡された、人間だった少年。 エリザに「ライト」の姓と兄の立場を与えられた。
寄り道ひとこまっ!
重い関係性を、少しだけ軽く見せる一幕。
ヴァトリ兄さん。僕はいたいけな少年だから、今日も守ってくれるよね?
いたいけな少年は、父親経由で人を引き取らない。
ご主人様としての自覚はあるらしい。
エリザは少し考えてから、「でも毎年ちゃんと支援金は払っているよ。えらいでしょう?」と言った。
