花札の札には、1月から12月までの花や草木が描かれています。 参考:任天堂
しかし、由来や季節感を調べ始めると「今の月の感覚と違う…」が必ず出てきます。
その“ズレ”の正体は、花札が生まれ育った時代の暮らしが
「旧暦(太陰太陽暦)」を前提に回っていたこと。
日本では明治6年(1873)から現在の太陽暦(グレゴリオ暦)が使われています。
この記事では、旧暦の基本と“読み替え方”だけを、根拠つきで整理します。
参考:公文書にみる日本のあゆみ
結論:花札の月は「旧暦の季節感」で読むと腑に落ちる
大事なのはこれだけです。
旧暦は「月の満ち欠け(新月)」で月の始まりを決める暦。
参考:国立天文台「旧暦」ってなに?
旧暦は季節を合わせるために「閏月」を入れるが、
同じ月日でも年によって季節が最大で約1か月前後する。
参考:「旧暦」は現在の暦より季節に合っているの?
そして“体感”として、
旧暦と新暦は平均1か月くらいズレがあるため、
旧暦の日付をそのまま今のカレンダーに移すと季節がズレて見える。
参考:「旧暦」は現在の暦より季節に合っているの?
つまり、花札の「月=季節の札」を読むときは「今の月」ではなく「旧暦の季節感」をいったん噛ませるのが近道です。
そもそも旧暦とは?超ざっくりでOKな基礎
旧暦(一般に「天保暦」を指すことが多い)は、
月の満ち欠けと季節(太陽の動き)を組み合わせた「太陰太陽暦」です。
旧暦の“月”の決め方

旧暦では「新月が起きた日」をその月の1日(朔日)と考え、次の新月までを1か月にします。
月の周期は約29.5日なので、月の長さは29日か30日になりやすい、という感覚だけ持っておけばOKです。
旧暦が放っておくと季節からズレる理由
12か月(約354日)だけだと、太陽の1年(約365日)より短いので、何もしないと季節に対して毎年どんどんズレます。
参考:「旧暦」は現在の暦より季節に合っているの?
そこで、旧暦は「閏月」を入れて調整します。
閏月って何?(花札の“ズレ”の原因でもある)
旧暦は、だいたい「19年に7回」くらいの割合で閏月を入れて、季節とのズレが大きくなりすぎないようにします。
そして閏月を入れる基準の中心にあるのが「二十四節気」。
太陰太陽暦では中気(ちゅうき)が入らない月を閏月にする、というルールが使われてきました。
参考:日本の暦「二十四節気(にじゅうしせっき)」
ここがポイントで、閏月は「毎年同じ月に入る」ものではありません。
だから旧暦の月日は、年によって季節が前後しやすいんです。
参考:「旧暦」は現在の暦より季節に合っているの?
旧暦はいつまで使われた?(”旧暦”の正体と改暦)
「旧暦」と一言で言うのですが、旧暦=昔の暦の全部ではなく、
一般に「太陽暦に切り替わる直前に使われていた暦法(天保暦)」を指すことが多いです。
天保暦は1844年(天保15/弘化元)から施行された「日本最後の太陰太陽暦」と説明されています。
そして日本は明治の改暦で太陽暦へ。
具体的には、明治5年12月2日の翌日を明治6年1月1日としてグレゴリオ暦を導入しました。
参考:国立天文台 1月1日はどうやって決まったの?
旧暦と新暦はどれくらいズレる?(花札の月とのズレの結論)
ただ、花札を読む目的なら、まずはこの理解で十分です。
平均的に、旧暦の日付は新暦より“約1か月遅れて見える”
ただし、同じ月日でも年によって最大で約1か月前後する
そのため、「花札の◯月=今の◯月」と決め打ちしないほうが、由来が自然につながります。
花札12か月「旧暦→新暦」読み替え早見表(目安)
目安として「だいたい1か月後ろ」を当てるための表です(年によって前後します)
| 花札の月 | 旧暦の季節感 | 新暦での目安 |
|---|---|---|
| 1月 | 正月〜晩冬 | 2月ごろ |
| 2月 | 早春 | 3月ごろ |
| 3月 | 春本番 | 4月ごろ |
| 4月 | 初夏の入り口 | 5月ごろ |
| 5月 | 初夏 | 6月ごろ |
| 6月 | 盛夏の手前 | 7月ごろ |
| 7月 | 夏(星の季節) | 8月ごろ |
| 8月 | 秋の入口・月の季節 | 9〜10月ごろ |
| 9月 | 秋・菊の季節 | 10月ごろ |
| 10月 | 晩秋〜初冬 | 11月ごろ |
| 11月 | 冬の気配 | 12月ごろ |
| 12月 | 年末〜冬 | 1月ごろ |
行事で覚えると一気に分かる(七夕・十五夜・重陽)
花札の札は「季節の象徴」なので、旧暦行事を1〜2個押さえると、体感のズレが一気にほどけます。
旧暦7月7日=(伝統的)七夕
七夕は、もともと「今の7月7日」ではなく、旧暦など太陰太陽暦の7月7日に行われていました。
だから「七夕=梅雨で星が見えない」の違和感も、旧暦側に置くと筋が通ります。
参考:国立天文台「伝統的七夕について教えて」
旧暦8月15日=中秋の名月(十五夜)
「中秋の名月」は太陰太陽暦の8月15日の月のこと。
この“旧暦8月=月をめでる季節”が分かると、花札の「芒に月」も読みやすくなります。
参考:国立天文台「中秋の名月(2025年10月)」
旧暦9月9日=重陽(菊の節句)
重陽は旧暦9月9日の節供で「菊の節句」とも呼ばれます。
花札の菊札に「盃」がいる理由(菊酒・宴のイメージ)へもつながります。
参考:コトバンク「重陽」
和風月名(睦月・如月・弥生…)とは?旧暦とどう関係あるの?
和風月名(睦月・如月・弥生…)は、旧暦(太陰太陽暦)の1月〜12月につけられた和風の月名です。
旧暦は新月を月の始まりとして月日を数え、季節のズレは閏月などで調整します。
和風月名は、旧暦の季節・行事の感覚に合わせて付けられた名前
だから、今の暦(新暦)の「1月・2月…」にそのまま当てはめると、季節感が1〜2か月ズレることがある
旧暦は閏月で調整するので、同じ月日でも年によって季節が前後し、月日が季節の目安になりにくい
花札の「○月」も、和風月名も、どちらも“旧暦の季節感”が土台です。
そのため現代のカレンダーにそのまま当てはめず、
「だいたい1〜2か月ズレることがある」と思って読むと、札の由来がすっと理解できます。
12か月の和風月名一覧
1月:睦月(むつき)
2月:如月(きさらぎ)
3月:弥生(やよい)
4月:卯月(うづき)
5月:皐月(さつき)
6月:水無月(みなづき)
7月:文月(ふみづき)
8月:葉月(はづき)
9月:長月(ながつき)
10月:神無月(かんなづき)
11月:霜月(しもつき)
12月:師走(しわす)
「水無月」って6月なの?
「水無月」は陰暦(旧暦)6月の異称です。
だから新暦6月の感覚とズレて見えることがあります。
(ついでに言うと「無」は“ない”に見えるけど、”の”の意味だったという説明もあります。
参考:コトバンク「水無月」
よくある質問(Q&A)
- 旧暦とは?
-
旧暦は、月の満ち欠け(新月)を基準に月を決め、季節(太陽の動き)も取り入れた「太陰太陽暦」です。改暦直前に使われていた「天保暦」を一般に旧暦と呼ぶことが多いです。
- 花札の月は“旧暦そのもの”ですか?
-
花札は「1月〜12月の花や草木」を描いた札です。参考:任天堂
ただ、花札が生まれ育った時代の暮らしは旧暦が標準だったので、由来や季節感を読むときは旧暦の感覚を前提にすると理解が深まります。 - 閏月がある年は、花札の月も変わってしまう?
-
旧暦の月日は年によって動きます。理由の中心は閏月です。
だから「花札の◯月=今の◯月」と固定せず、だいたい1か月後ろを目安に読むのが安全です。 - 旧暦と新暦は何日ずれてる?
-
固定で「何日ズレる」とは言えません。旧暦は閏月で調整するため、旧暦の日付を新暦に換算すると年ごとに変わります。
ただし体感としては、旧暦と新暦は平均1か月ほどズレることがあり、これを考慮せずに日付だけ移すと季節感のズレが起きます。
(※具体例として、国立天文台は「明治3年の旧暦1/1=新暦2/1、翌年の旧暦1/1=新暦2/19」のように年で動く例を挙げています) - 旧暦って“季節にぴったりの暦”なんですか?
-
ぴったり、ではありません。
旧暦は閏月で季節のズレをまとめて調整するため、同じ月日でも年によって季節が最大で約1か月前後します。季節の目安としては、太陽の動きで決まる二十四節気が使われてきました。
- 1月から12月までの旧暦は?
-
旧暦の月は「1月〜12月」と番号でも呼びますが、和風月名(睦月・如月・弥生…)という呼び名も使われました。
和風月名は旧暦の季節・行事に合わせたため、
現在の暦にそのまま当てはめると季節感が1〜2か月ズレることがあります。 - 和風月名ってなに?
-
旧暦で使われていた「月の和風の呼び名」です(睦月・如月・弥生など)
- 和風月名は旧暦と関係あるの?
-
関係あります。和風月名は旧暦の季節や行事に合わせた名前なので、今の暦にそのまま当てはめると季節感がズレることがあります。
- 「睦月=1月」って覚えていい?
-
覚えてOKですが、正確には「旧暦の1月の別名が睦月」です。
旧暦は閏月で調整するので、同じ月日でも年によって季節が前後し、月日が季節の目安になりにくい点に注意です。
- 旧暦の月日が季節の目安になりにくいのはなぜ?
-
旧暦は閏月を入れて季節とのズレをまとめて調整するため、同じ月日でも年によって季節が最大で約1か月前後します。
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