サザノノ 性分帖。 > 芯 > 凡人
凡人キャラとは、天才や秀才と比べられる場所に立ち、自分の才能が足りないことを知ったうえで、それでも同じ土俵から降りないキャラクターのことです。
要点
- 辞書では「普通の人。ただの人」。平安時代には身分の低い人を指す言葉で、今は才能に恵まれない人、天才の反対という意味で使われることが多くなっています
- 見分ける条件は3つ。天才や秀才と比べられている・才能の差を本人が知っている・それでも同じ土俵に立ち続けている
- 一般人は「特別な人たちの輪の中で、普通の感覚を保つ人」を言う立場の言葉。凡人は才能の差を知ったうえで、どう生きるかを問われる才能の言葉です
- 自分を「凡人」と呼ぶキャラが人気投票で1位になるなど、天才より凡人に心を寄せる読者は多く、才能の差をどう受け止めるかが書き所です
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凡人の意味と語源
凡人は「ぼんじん」と読みます。辞書(デジタル大辞泉)では、普通の人。ただの人と説明され、類語に凡夫、常人、凡才が挙げられています。「凡」の字は、全体を通じてという意味と、一般的で特に目立たないという意味を持ち、平凡、凡庸、非凡などに使われています。
古くは「ぼんにん」と読み、意味も今とは少し違いました。日本国語大辞典は、平安時代の日記『小右記』(999年)に、皇族や貴族に対して身分の低い人を言う用例を挙げています。鎌倉時代の軍記物語『平治物語』(1220年ごろ)には「普通の人、ただの人」の意味の用例があります。「ぼんじん」の読みは江戸時代の読本に見られ、辞書の見出しに立つのは1897年以降です。身分を言う言葉から、才能を言う言葉へ、ゆっくり重心が移ってきました。
今の凡人は、天才や秀才と対にして使う言葉です。対義語は偉人、類義語は凡才で、凡才の対義語が天才や秀才です。「天才と凡人とは異なる思考回路を持つ」のように、比べる相手があって初めて意味がはっきりします。プラスにもマイナスにも突出していない、本当に平均的な人を言う言葉で、他人に軽々しく使う言葉ではありません。
キャラクター属性としての凡人は、才能の差を自分でどう受け止めるかが中心になるので、性分帖では芯の群に入れています。立場の言葉である一般人(立ち位置)とは、ここで分けています。
凡人キャラかどうかの見分け方
普通のキャラが、すべて凡人キャラになるわけではありません。凡人キャラと呼べるのは、次の3つがそろった時です。
- 天才や秀才と比べられている:同じ部、同じ職場、同じ道に、届かない相手がいる。比べる相手がいない普通は、ただの一般人です
- 才能の差を本人が知っている:自分がどこまでできて、どこからできないかを、本人がいちばん分かっている。知らずに夢を見ている段階は、まだ凡人とは呼ばれません
- それでも同じ土俵に立ち続けている:差を知ったうえで、やめない。降りた瞬間に、物語の中では一般人やモブに戻ります
一般人・努力家・秀才・ライバルとの違い
凡人は、「普通」や「努力」を扱う属性とよく混ざります。こう覚えると見分けやすくなります。一般人は立場が普通、凡人は才能が普通、努力家は続ける人、秀才は積み上げて結果を出す人。
| 凡人 | 一般人 | 努力家 | 秀才 | ライバル | |
|---|---|---|---|---|---|
| 何についての言葉か | 才能、器 | 立場、関係 | 続ける姿勢 | 積み上げた力と結果 | 主人公との関係 |
| 比べる相手 | 天才、秀才 | 特別な人たち全体 | (昨日の自分) | 天才、凡人 | 主人公 |
| 本人の気持ち | 劣等感と、開き直りと、それでも | 気楽さ、誇り、悩み | やればできるという信頼 | 努力への自負 | 対抗心、敬意 |
| 崩れる瞬間 | 努力しても届かないと、はっきり見せられた時 | 自分も当事者だと気づいた時 | 努力が意味を失った時 | 理屈の通じない相手に出会った時 | 比べる相手がいなくなった時 |
いちばん混ざりやすいのは一般人です。どちらも「普通の人」ですが、重心が違います。一般人は、特別な人たちの輪の中で、立場が普通な人で、比べる相手は特別な人たち全体です。凡人は、天才や秀才と同じ道に立ち、才能の差を突きつけられている人です。超能力者の集団の中では一般人と呼ばれ、天才の幼なじみとしては凡人と呼ばれる、というように、同じキャラでも誰と並べて語るかで呼び方が変わります。
努力家との違いは、才能の差が話に出てくるかです。努力家は、結果が出ていなくても励み続けている姿そのものを言う言葉で、天才と比べる必要はありません。凡人は、才能が足りないという前提があって初めて成り立つ言葉です。同じキャラが両方を持つことは多く、凡人キャラのほとんどは努力家でもあります。秀才は、積み上げた力で結果を出している人です。凡人は、積み上げても天才に届かない所から話が始まります。ライバルは主人公との関係を言う言葉で、才能の有無は問いません。凡人がライバルになると、「才能で負けている側が、どう食いつくか」が物語になります。
凡人・凡才・一般人・モブ、言葉の違い
| 凡人 | 凡才 | 一般人 | モブ | |
|---|---|---|---|---|
| 辞書の意味 | 普通の人、ただの人(古くは身分の低い人) | 平凡で、特にすぐれたところのない才能。その人 | 特別の身分や地位をもたない人、特別の関係がない人 | (群衆。創作では名前のない通行人) |
| 言葉の重心 | 人そのもの | 才能だけ | 立場、関係 | 物語での扱い |
| 自分で言えるか | 言える(「俺は凡人だ」) | 言える(やや自嘲) | 言える | 言わない |
| キャラでの響き | 天才に届かない人、それでも追う人 | 才能の評価そのもの | 巻きこまれた、輪の中の普通の人 | 見せ場のない背景 |
凡才は才能だけを言う言葉で、凡人はその才能を持った人そのものを言います。キャラクターが自分を語る時は、「俺は凡人だ」と言うことがほとんどで、そこには才能の話だけでなく、それをどう引き受けているかの覚悟が含まれています。
凡人キャラの型
凡人は「才能の差を知ったあと、どう動くか」で型が分かれます。
幼なじみや相棒が天才で、いつも比べられる型です。本人は自分を凡人だと思っていますが、天才のほうは、同じ道を走ってくれる相手に救われています。二人の関係そのものが物語になります。
才能のなさを自分がいちばん知っていて、頭と準備で勝ちに行く型です。奇策に頼らず、正面からぶつかるところに熱があります。たとえば、手嶋純太(『弱虫ペダル』)がこの型です。
学生時代に天才と出会い、社会に出てからも、才能のある人たちの中でもがき続ける型です。何者かになりたい一心が、そのまま働く理由になっています。たとえば、朝倉光一(『左ききのエレン』)がこの型です。
周りより何年も遅れて始め、幼い頃から打ち込んできた仲間の隣に立とうとする型です。差は分かりきっているのに、練習の量で食いついていきます。たとえば、玉田俊二(『BLUE GIANT』)がこの型です。
才能も経験もないまま、やりたいという気持ちだけで天才たちの輪に入っていく型です。うまくできない日々を、明るさで乗り切ります。たとえば、秋音律子(『青のオーケストラ』)がこの型です。
同じ道で追いつけないと分かったあと、天才を支える側に立ち位置を変える型です。降りたのではなく、戦い方を変えた人として描かれます。本人の未練をどう描くかが見せ場です。
本人は自分を凡人だと思っているのに、周りから見ると、続ける力や人を見る目がすでに非凡な型です。
才能の差を受け止めきれず、天才を妬み、足を引っ張り始める型です。本人も気づかないまま変わっていく怖さがあり、凡人の影の面として描かれます。
凡人キャラの作り方と台詞例
同じ凡人キャラでも、キャラの性別や、誰に向けた作品かで「心が動くポイント」が変わります。4つの向きごとに、よくある形と、外し方、台詞例をまとめました。
台詞は「心の距離」の順に4段階で並べています。表の顔 → ほころび(素が一瞬見える)→ 信頼した相手だけ → 独りの時。凡人キャラは、表の顔では自分の才能のなさを軽く口にし、ほころびで天才との差に揺れる気持ちがのぞき、信頼した相手には続ける理由を打ち明け、独りの時には誰にも見せない悔しさと、小さな手応えを数えています。話し方は口振カルテで調整できます。
下に行くほど心の距離が近づきます。同じ人物の4つの顔として読んでください。
自分のキャラクターの顔を置くと、下の台詞をその子が話しているように読めます。
性分帖の台詞は、自分で作ったキャラクターにどんな口調や性格が合うかを確かめるためのものです。画像と名前はこの端末にだけ保存され、ほかの属性のページでも同じ子が出ます。
ドラッグで位置を動かせます
女性の凡人キャラ
女性の凡人キャラは、天才の親友を持つ部員や、才能ある姉妹の隣で育った子として描かれることが多い型です。比べられてきた年月の長さがそのまま重さになります。悔しさを隠さず、それでもやめない理由を本人の言葉で持たせると、読者が自分を重ねやすい人物になります。
- よくある形
- 天才の親友と同じ部に入った部員/才能ある姉や妹と比べられ続けた子/遅れて始めた楽器で天才の隣に座る初心者/天才の弟子を見送る側の先輩
- 外すなら
- 彼女の「人を見る目」や「続ける力」が、天才の側から見るといちばん欲しかったものだと分かる形にする。または、天才のほうが彼女を凡人だと思っていなかったと分かる形にする
- 気をつけたいこと
- 才能のなさを、泣いて慰められるためだけの道具にしないこと。悔しさの後に、彼女が自分で選ぶ一手を置くと、同情ではなく応援を集める人になります
1表の顔人前・ふだん
「あの子は一回で覚えるでしょ。私は十回。だから十回やるだけ」
練習室で、譜面に鉛筆で印をつけながら、後輩に
2ほころび素が一瞬見える
「……今の、私が三か月かけたところだよ。初見で」
隣で親友が通した一節を聞いて、弓を止めたまま
3信頼した相手だけ見せると決めた本音
「追いつけないのは知ってる。でも、あの子の隣で弾くのをやめたら、私はもう何者でもなくなる気がするの」
帰り道の公園で、昔からの友人とベンチに並んで
4独りの時誰にも見せない本音
「先週より、二拍だけ長く持った。二拍。覚えておこう」
夜、消灯した部屋で、録音した自分の音を聞き返して
男性の凡人キャラ
男性の凡人キャラは、才能ある後輩に抜かれる先輩、天才の相棒、才能だらけの職場で働く若手として描かれることの多い型です。自分を「凡人」と言い切るところに、弱さではなく覚悟が見えると、読者がいちばん肩入れする人物になります。
- よくある形
- 才能ある後輩にレギュラーを取られた先輩/天才の幼なじみと同じ道を選んだ男/才能ひしめく職場の若手/遅れて始めた楽器で天才の隣に立つ男
- 外すなら
- 彼が「凡人」と自分を呼ぶたびに、天才のほうがいちばん傷ついていたと分かる形にする。または、彼の積み上げた準備が、天才にも読めなかった一手になる形にする
- 気をつけたいこと
- 天才への劣等感を、天才を見下す言葉や足を引っ張る行動にすり替えないこと。悔しさは天才にではなく、自分の昨日に向いていると分かる場面を置くと、応援したくなる人になります
1表の顔人前・ふだん
「俺は凡人だからな。準備しないと、スタートラインにも立てない」
試合前の控え室で、相手チームの資料を広げながら、後輩に
2ほころび素が一瞬見える
「……今の、俺なら三年前に諦めてる角度だ。あいつ、笑ってやがった」
後輩の一本を見て、立ち上がりかけた体を椅子に戻して
3信頼した相手だけ見せると決めた本音
「才能がないのは分かってる。でも、才能がないやつが勝つところを、一度でいいから見せたいんだ。俺自身に」
夜の部室で、同じ補欠だった同期と二人、床に座って
4独りの時誰にも見せない本音
「あいつの一本、頭から離れねえ。いいよ、離れなくて。明日いちばんに体育館の鍵を開けるのは、それでも俺だ」
誰もいない帰り道、自転車を押しながら、空に向かって
女性向け作品の男性の凡人キャラ
女性向けでは、きらびやかな才能の持ち主たちの中で、ただ一人、努力で食いついている男性が描かれます。本人は自分を下に見ているのに、主人公にだけはその粘りが見えている。天才たちには向けられない、「この人を支えたい」という気持ちがときめきになります。
- よくある形
- 才能派ぞろいのユニットで努力担当と呼ばれる男/天才の兄と比べられて育った弟/主人公の職場の、器用ではないが粘る先輩/遅れてデビューした新人俳優
- 外すなら
- 彼が「凡人」と言うたび、主人公が一つずつ反証を数えていく形にする。または、天才のほうが、彼の積み重ねをいちばん近くで見ていてうらやんでいた形にする
- 気をつけたいこと
- 自分を下げる言葉ばかりにしないこと。悔しさの後に、彼が自分で決めて動く場面を置くと、慰めたい人ではなく、隣で見ていたい人になります
1表の顔人前・ふだん
「俺の担当は努力。才能のほうは、あっちの二人に聞いて」
取材の控え室で、笑いながら、隣のメンバーを指して
2ほころび素が一瞬見える
「ごめん、もう一回見せて。……今のは、何回やっても出ない気がする」
レッスン後、メンバーの振りを動画で見返して、小さく
3信頼した相手だけ見せると決めた本音
「あいつらと同じ舞台に立てるのは、俺が一番遅くまで残ってるからだ。それだけは、誰にも譲らない」
終電間近の稽古場で、差し入れを持ってきた主人公に、背を向けたまま
4独りの時誰にも見せない本音
「『見てた』の三文字。次の駅で降りて、稽古場に戻りたくなってる。凡人は、これだから」
帰りの電車で、「今日の練習、見てた」の短い文面を読み返して
男性向け作品の女性の凡人キャラ
男性向けでは、天才の主人公のそばで、追いつけないと知りながら同じ道を続けている女性が描かれます。才能で勝てないぶん、相手を見ている時間がいちばん長い。その目が、天才の主人公が自分でも気づいていない変化を言い当てる場面が見せ場になります。
- よくある形
- 天才の主人公と同じ部の、努力型の同級生/主人公の幼なじみで、同じ競技を続けている子/才能ある妹を持つ姉/天才の弟子たちの中の、いちばん遅い弟子
- 外すなら
- 彼女の努力の跡を、天才の主人公が初めて見て言葉を失う形にする。または、主人公が壁にぶつかった時、彼女の「十回やる」やり方が唯一の答えになる形にする
- 気をつけたいこと
- 天才の主人公を引き立てるための、負け役にしないこと。彼女の積み重ねに、彼女自身が納得している場面を置くと、主人公と並ぶ一人の人物になります
1表の顔人前・ふだん
「あなたの今の一本、フォームが昨日と違ってた。自分で気づいてないでしょ」
練習の合い間、タオルを渡しながら、主人公に
2ほころび素が一瞬見える
「……いいなあ。私も、一回でいいから、あんな顔で打ってみたい」
主人公が決めた瞬間、拍手の手を止めて、ひとりごとのように
3信頼した相手だけ見せると決めた本音
「追いつけないのは、もう知ってる。でも、あなたがどこまで行くのか、いちばん近くで見てたい。それは才能がなくてもできるから」
大会前夜、電話口で、しばらく黙ったあとに
4独りの時誰にも見せない本音
「今日の素振り、三百。手の皮、またむけた。でも、昨日より音がよかった」
夜、自分の部屋で、手のひらに絆創膏を貼りながら
凡人キャラを書く時のコツと避けたいこと
コツ
- 比べる相手を一人決める:天才の幼なじみ、才能ある後輩、職場のエース。凡人は、比べる相手がいて初めて凡人になります。相手がはっきりすると、同じ凡人でも別のキャラになります
- 差を知った瞬間を一つ書く:初見で弾かれた一節、何も考えずに決めた一本。本人が「違う」と分かった場面があると、その後の努力に重さが出ます
- 努力を数字と物で見せる:十回、三百本、二拍、絆創膏。「頑張った」と言わせるより、数えている姿で見せると、凡人の粘りが伝わります
- 天才側の目線を一度入れる:天才が凡人をどう見ているかを一場面入れると、凡人の価値が読者に伝わります。うらやんでいた、救われていた、怖かった。どれでも物語になります
避けたいこと
- 才能のなさを、慰められるためだけの設定にすること。悔しさの後に本人が選ぶ一手まで書くと、同情ではなく応援を集める人になります
- 劣等感を、天才を見下す言葉や、足を引っ張る行動にすり替えて、それを正しいこととして描くこと。「天才をうらみ始める型」として書くなら、本人の変化を怖さとして描き分けたいところです
- 努力が必ず報われる形だけにすること。届かなかった時に何を持ち帰るかまで書くと、凡人キャラらしさが出ます
- 一般人・モブと混ぜること。比べる相手も、同じ土俵もない普通の人は、凡人ではなく一般人として描き分けたいところです
凡人に合う口調・組み合わせやすい属性
合う口振(口振カルテへ)
凡人キャラは、「才能の差を、どんな言葉で口にするか」で口振を選ぶと書きやすくなります。あっさり認めるのか、自分を下げて言うのか、冷静に分析するのか、熱で押し返すのか。同じ凡人でも、天才の隣にいる時の空気が変わります。
組み合わせやすい属性
凡人に努力家を重ねると、才能の差を努力の量で埋めようとする王道の形になります。負けず嫌いを重ねると、差を知っていてもなお負けを認めない、熱のある凡人に。ライバルを重ねれば、才能で負けている側の挑戦者という、応援したくなる立ち位置になります。隠れ努力家を重ねると、涼しい顔で凡人を演じながら誰より練習している人に。策士・参謀を重ねると、才能のなさを頭と準備で補う凡人になります。一般人を重ねると、超能力者の中では一般人、天才の隣では凡人という、二つの普通を持つキャラになります。
ぶつかりやすい属性(あえて使うと面白い)
天才肌は、努力のあとを見せずに感覚で答えに届く属性で、凡人とは正反対の場所に立っています。一人に重ねるのは難しいものの、関係性で並べると、天才と凡人という、いちばん古くて強いふたりになります。自信家も、自分を凡人と呼ぶキャラとは向きが逆です。並べると、根拠のある自信と、根拠を積み上げる凡人の対比が物語になります。
凡人キャラの歴史
ここでは、言葉の成り立ちと、主な出来事をまとめます。
年表を開く
平安時代の貴族の日記『小右記』に、皇族や貴族に対して身分の低い人を言う「凡人(ぼんにん)」が見られます。日本国語大辞典が挙げる、いちばん古い用例です。
軍記物語『平治物語』に、「普通の人、ただの人」の意味の用例が見られます。身分の言葉から、ふつうの人を言う言葉へ、意味が広がっていきました。
江戸時代の読本に「ぼんじん」の読みが見られます。辞書の見出しが「ぼんにん」から「ぼんじん」に変わるのは1897年以降で、今の読みが定まったのは明治の終わりごろです。
自転車競技部を描く漫画の連載が始まります。自分を「凡人」と呼び、頭と準備で天才たちに食いつく先輩キャラが、凡人キャラの代表として語られるようになりました。
ジャズに人生を懸ける若者たちの漫画の連載が始まります。幼い頃から打ち込んできた天才の隣で、遅れて楽器を始めた初心者が食らいついていく姿が描かれ、2023年には映画になりました。
「天才になれなかった全ての人へ」を掲げる漫画が、ウェブで連載を始めます。広告代理店で働く凡人のデザイナーと天才の画家を軸にした物語で、2019年に実写ドラマ、2026年にテレビアニメになりました。
才能を天才・秀才・凡人の三つに分けて職場の人間関係を考えるビジネス書が刊行され、ベストセラーになります。「凡人」が、自分を語る言葉として一般の読者に広く使われるようになりました。
自転車競技漫画のクライマーの人気投票で、自分を「凡人」と呼ぶキャラが1位になります(ねとらぼ調査隊、1,395票中331票)。コメントには「非凡な努力の才能」「全力でがむしゃらな走り」が並びました。
初心者の少女が天才たちのオーケストラで食らいつく作品の第2期、凡人のデザイナーと天才の画家の物語のテレビアニメが続けて放送されます。凡人を主役に置く作品が、今も新しく作られています。
今の凡人キャラのイメージ
- 天才より、凡人に心を寄せる:自分を凡人と呼ぶキャラは、自分と重ねて共感しやすく、特別な能力がなく読者に近いからこそ応援したくなります。天才の活躍より、凡人の粘りが支持されています
- 努力の継続が、凡人の武器:才能を受け継いだ主人公ではなく、凡人の脇役の「意思と努力」を見本にする読み方が広がっています。凡人が天才に勝る方法は努力の継続だけだ、という言い方もされます
- 「天才になれなかった全ての人へ」:凡人のデザイナーを主人公にした作品のキャッチコピーが、そのまま凡人キャラの受け止め方を表しています。自分は天才ではないと知っている読者が、自分の物語として読んでいます
- 自己啓発の言葉としても:2010年代の終わりから、「天才を殺す凡人」「凡人の戦術」「凡人が天才に勝つ方法」のように、凡人を題名に掲げたビジネス書や自己啓発書が続いています。凡人は、現実の自分を語る言葉として定着しています
- 普通こそが最強、という見方:特殊な力を持つ人物を描いてきた漫画家が、「特殊能力のない普通の人がいちばん最強」と語るインタビューもあります。凡人であることを弱さではなく、強さの土台として描く作品が増えています
よくある質問
凡人とはどういう意味ですか?
普通の人、ただの人のことです。「ぼんじん」と読みます。平安時代には身分の低い人を言う言葉でしたが、今は才能に恵まれない人、天才の反対という意味で使われることが多くなっています。類語に凡夫、常人、凡才があります。
凡人と一般人の違いは何ですか?
凡人は才能についての言葉で、天才や秀才と並べた時に使います。一般人は立場についての言葉で、特別な身分や地位、特別な関係がない人を言います。キャラクターでは、天才の幼なじみは凡人、超能力者の集団の中の普通の人は一般人、と呼ばれやすくなります。
凡人と努力家の違いは何ですか?
努力家は、結果が出ていなくても目標に向かって励み続けている姿を言う言葉で、天才と比べる必要はありません。凡人は、才能が足りないという前提があって成り立つ言葉です。凡人キャラのほとんどは努力家でもありますが、努力家がすべて凡人というわけではありません。
凡人と凡才の違いは何ですか?
凡才は「平凡で、特にすぐれたところのない才能」で、才能だけを言う言葉です。凡人はその才能を持った人そのものを言います。キャラクターが自分を語る時は「俺は凡人だ」のように凡人を使うことが多く、そこには才能の差をどう引き受けているかの覚悟が含まれています。
凡人キャラはなぜ人気があるのですか?
読者の多くが、自分を天才ではないと知っているからです。自分と重ねて共感しやすく、特別な能力がなく読者に近いからこそ、応援したくなります。才能の差を知ったうえで同じ土俵から降りない姿が、天才の活躍とは別の種類の勇気を渡しています。
凡人キャラを暗くしすぎずに書くには?
比べる相手を一人決め、努力を数字と物で見せ、悔しさの後に本人が選ぶ一手を書くことです。「十回やる」「昨日より二拍長く持った」のように数えている姿があると、劣等感だけの人ではなく、自分の昨日と戦っている人として伝わります。天才側が凡人をどう見ているかを一度入れると、さらに救いが生まれます。
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参考にした資料
- コトバンク「凡人」(デジタル大辞泉・精選版 日本国語大辞典の語釈、『小右記』999年・『平治物語』1220年ごろの用例、「ぼんじん」の読みの広まり)
- Weblio辞書「凡人」(デジタル大辞泉「ぼんじん」「ぼんにん」、Wikipedia「凡人」の対義語・類義語)
- Weblio辞書「凡才」(デジタル大辞泉の語釈)
- コトバンク「凡」(デジタル大辞泉の字義、平凡・凡庸・非凡)
- ニコニコ大百科「凡人」(いたって普通の人、軽々しく使う言葉ではない)
- TV Tropes「Overshadowed by Awesome」(優れた仲間の陰で見劣りするキャラ、努力が報われにくい型)
- ねとらぼ調査隊「弱虫ペダル クライマーのキャラクター人気ランキング」(2021年10月19日、1,395票、1位 手嶋純太 331票、自らを「凡人」と称する戦略家)
- みんなのランキング「手嶋純太」(「自分と重ねて共感」「特別な才能はなくても努力と根性は」のコメント)
- ニコニコ大百科「弱虫ペダル」(手嶋純太の紹介、自らを凡人と称する策士)
- マンガペディア「渡辺航」(『弱虫ペダル』2008年『週刊少年チャンピオン』連載開始)
- 東洋経済オンライン「凡人が天才に勝る方法は『努力の継続』だけだ」(2018年5月11日、意思と努力の脇役キャラを見本にする読み方)
- TVアニメ『左ききのエレン』公式サイト(朝倉光一の紹介、キャッチコピー「天才になれなかった全ての人へ」)
- テレ東プラス『左ききのエレン』記者会見の記事(2026年3月15日、凡人のデザイナー・朝倉光一、4月7日放送開始)
- アニメハック『左ききのエレン』キャスト発表の記事(2015年note連載、2017〜22年リメイク版、2019年実写ドラマ)
- 映画『BLUE GIANT』作品情報(初心者の玉田俊二、幼い頃からジャズに全てを捧げてきた雪祈)
- Precious.jp 映画『BLUE GIANT』の記事(2013年『ビッグコミック』連載開始、2023年2月17日公開)
- ORICON NEWS『青のオーケストラ』作品ページ(秋音律子「未経験のヴァイオリンを演奏したがる、明るく正義感の強い少女」)
- 週刊アスキー『青のオーケストラ』第2期の記事(2025年10月放送・配信開始)
- 日経BOOKプラス『天才を殺す凡人』の抜粋記事(天才・秀才・凡人の三つの才能、2019年刊行)
- PR TIMES『天才になれなかった全ての人へ』刊行の記事(2023年5月27日、『左ききのエレン』原作者の才能論)
- 講談社『凡人の戦術』書誌情報(2023年10月20日)
- 文春オンライン 日渡早紀インタビュー(「特殊能力がない普通の人が一番最強」)

