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トリックスターとは、決まりや秩序をわざとかき回し、いたずらや知恵で物語を思わぬ方向へ動かす、善とも悪とも言い切れないキャラクターのことです。
要点
- 辞書では「神話や民間伝承に現れるいたずら者。秩序を壊しながら新しいものを生む、善と悪をあわせ持つ者」。神話の研究から広まった言葉です
- 見分ける条件は3つ。わざと、知恵でかき回す・決まりや陣営の外に立つ・善とも悪とも言い切れない
- トラブルメーカーとは「わざとかどうか」で分かれます。トラブルメーカーは悪気なく騒ぎを起こす、トリックスターはわざと秩序をかき回す、黒幕は裏で筋書きを動かす
- 壊すだけで終わらず、かき回したあとに新しい流れが生まれるのがトリックスターです。賢さと、ときに失敗する愚かさの両方を持っています
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トリックスターの意味と語源
トリックスターは、英語の trickster から来た言葉です。trick(策略・いたずら)に「〜する人」を表す -ster がついた形で、英語では18世紀の初めから「策略を使う人」の意味で使われてきました。辞書(デジタル大辞泉)には二つの意味があり、一つは「詐欺師。ぺてん師」、もう一つが「神話や民間伝承に現れるいたずら者。秩序を壊しながら一方で新しいものを生み、善と悪のような矛盾した性格を持ち、対立する二つのものの間をつなぐ者」です。キャラクターの属性として使うのは、この二つ目の意味です。
この意味は、神話や民話の研究から広まりました。世界各地の神話には、策略で神々を出し抜き、火や食べ物を盗んで人間にもたらす一方で、欲に負けて失敗し笑われもする「いたずら者」が登場します。賢者と愚者、文化をもたらす英雄と秩序を壊す厄介者。その矛盾した役割を一人で持っているのが、トリックスターです。日本では、文化人類学の分野で「道化」と並べて論じられ、物語の端から中心をひっくり返す人物を指す言葉として知られるようになりました。
キャラクター属性としては、物語の中でどんな役を果たすかで決まるため、立ち位置の群に入れています。同じ読みのユニット名やゲームの名前もありますが、このページで扱うのは人物の類型としてのトリックスターです。
トリックスターキャラかどうかの見分け方
いたずら好きなキャラ、場をかき回すキャラが、すべてトリックスターというわけではありません。トリックスターキャラと呼べるのは、次の3つがそろった時です。
- わざと、知恵でかき回す:うっかりや勢いではなく、自分の考えで決まりを破り、相手を出し抜く。だましや変装、意表を突く手を使う
- 決まりや陣営の外に立つ:どの陣営にも深く属さず、敵とも味方とも言い切れない場所にいる。だから内側からは打てない手を打てる
- 善とも悪とも言い切れない:かき回した結果、誰かが困ることもあれば、行き詰まった状況が開けることもある。壊したあとに新しい流れが生まれる
トラブルメーカー・策士・黒幕・天邪鬼との違い
トリックスターは、場をかき回す言葉や、企む人の言葉とよく混ざります。こう覚えると見分けやすくなります。トラブルメーカーは悪気なく騒ぎを起こす、トリックスターはわざと秩序をかき回す、黒幕は裏で筋書きを動かす。
| トリックスター | トラブルメーカー | 策士・参謀 | 黒幕 | 天邪鬼 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 何についての言葉か | 秩序をかき回す役回り | 騒ぎを起こす役回り | 計画を立てる頭脳 | 陰で操る立場 | 逆を選ぶ性格 |
| わざとか | わざと。いたずらや知恵で | たいてい悪気がない | わざと。計画どおりに | わざと。正体を隠して | わざと。気持ちと反対に |
| 立つ場所 | どの陣営にも深く属さない | 仲間の輪の中 | 味方の陣営の中 | 物語の陰 | 相手の正面 |
| かき回したあと | 新しい流れが生まれる | 騒ぎが収まり、笑い話になる | 計画どおりの結果が出る | 真相が明かされる | 言いそびれた本心が残る |
| 崩れる瞬間 | 自分のいたずらが、自分に跳ね返った時 | 自分の騒ぎで仲間が本当に困った時 | 読めない相手に出会った時 | 正体に気づかれた時 | 素直に言うしかなくなった時 |
いちばん並べられるのはトラブルメーカーです。トラブルメーカーは、思いつきや悪ノリで動いた結果として騒ぎが起き、たいてい悪気がありません。トリックスターは、決まりを破ると決めて動き、だましや意表を突く手で相手を出し抜きます。騒ぎが思いつきの「結果」なのがトラブルメーカー、「狙い」なのがトリックスターです。
策士・参謀や黒幕も企む人ですが、目的に向けて筋書きを整えるのが仕事です。トリックスターは筋書きを壊す側で、本人も結果を全部は読んでいません。だからこそ、自分の仕掛けたいたずらに自分が足をすくわれることもあります。神話のトリックスターが、賢さを称えられながら、失敗して笑われもするのはそのためです。
トリックスターと近い言葉
| 道化 | 狂言回し | 愉快犯 | 文化英雄 | |
|---|---|---|---|---|
| どんな言葉か | おどけたふるまいで人を笑わせる役 | 話の進行役として物語を回す人物 | 人が慌てる様子を面白がって騒ぎを起こす人 | 神話で、人間に火や知恵をもたらす者 |
| トリックスターとの関係 | 重なることが多い。笑いの奥に秩序をひっくり返す力を持つと、トリックスターに近づく | 別名として使われることもある。トリックスターは回すだけでなく、壊す | 面白がる点は同じ。新しい流れを生まず、騒ぎで終わる | 同じ人物が両方の顔を持つことが多い |
トリックスターキャラの型
トリックスターキャラは、何のために秩序をかき回すかで分かれます。神話や民話から続く古い型と、今の物語で人気の型を並べました。
神々の仲間でありながら、嘘や変身で厄介ごとを持ちこむ型です。困らせた相手を、今度は知恵で窮地から救うこともある。味方なのか敵なのか、最後まで言い切れない危うさが魅力になります。たとえば、ロキ(北欧神話)がこの型です。
力では勝てない相手を、口のうまさとだましでやりこめる型です。民話の狐や野ウサギから続く、いちばん古いトリックスターの形。調子に乗りすぎて自分の仕掛けにはまる、間の抜けた結末もよく似合います。
人間の恋や計画を面白がってかき回し、自分は少しも困らない型です。悪意はなく、ただいたずらが楽しい。その軽さが騒ぎを大きくし、最後には思いがけない形でもつれをほどいていきます。たとえば、パック(『夏の夜の夢』)がこの型です。
決まりを守らず大暴れして、一度は封じられた厄介者が、旅や仲間を通じて英雄になっていく型です。乱暴さも反骨心もそのまま、悪を倒す力に変わる。秩序の外にいたからこそ、秩序を守る側に回れます。たとえば、孫悟空(『西遊記』)がこの型です。
人の決まりを知らない場所で育ち、手順も常識も飛び越えて物語に入ってくる型です。型破りなやり方で、誰も思いつかない突破口を開く。仲間を知るほど人らしくなっていく姿も、この型の見どころです。たとえば、嘴平伊之助(『鬼滅の刃』)がこの型です。
決まりきった毎日を何より嫌い、驚きのある方へ周りを連れ出す型です。軽やかで気まぐれに見えて、相手を翻弄する手並みは鮮やか。遊び心の奥で、自分の役目を忘れないところに芯があります。たとえば、鶴丸国永(『刀剣乱舞』)がこの型です。胡桃(『原神』)もこの型です。
気まぐれで尊大、思いつくまま周りを騒ぎに巻きこむのに、その騒ぎがいつのまにか事件の解決につながっている型です。かき回すことを、本人は楽しい宴として仕掛けている。振り回される家族や仲間も、最後には笑っています。たとえば、乱崎凶華(『狂乱家族日記』)がこの型です。
どの陣営にも深く属さず、気まぐれに手を貸したり裏切ったりする型です。何を考えているか読めないまま、行き詰まった状況を外側からひっくり返す。主人公たちにとって、いちばん信じたくて信じきれない相手です。たとえば、オーエン(『魔法使いの約束』)がこの型です。
トリックスターキャラの作り方と台詞例
トリックスターは、男女どちらにも、どの向けの作品にもいる立ち位置です。ここでは4つの向けに分けて、よくある形と外し方、台詞例をまとめました。
台詞は「心の距離」の順に4段階で並べています。表の顔 → ほころび(素が一瞬見える)→ 信頼した相手だけ → 独りの時。トリックスターキャラは、表の顔では明るく「やっちゃった」と騒ぎを起こし、ほころびでそれが計算ずくだったことがのぞき、信頼した相手には仕掛けた理由を、独りの時には軽さの奥にある本音を抱えています。話し方は口振カルテで調整できます。
下に行くほど心の距離が近づきます。同じ人物の4つの顔として読んでください。
自分のキャラクターの顔を置くと、下の台詞をその子が話しているように読めます。
性分帖の台詞は、自分で作ったキャラクターにどんな口調や性格が合うかを確かめるためのものです。画像と名前はこの端末にだけ保存され、ほかの属性のページでも同じ子が出ます。
ドラッグで位置を動かせます
女性のトリックスターキャラ
女性のトリックスターは、固まった集団の空気をひっくり返す役でよく光ります。古いしきたりの残る家や学校、誰も逆らえない組織に、軽い顔で入りこんで決まりを揺さぶる。気まぐれに見えて、壊すものと守るものを、本人だけはちゃんと選んでいます。
- よくある形
- しきたりを笑い飛ばして村の行事を作り変える旅人/生徒会の決まりの穴を突いて騒ぎを起こす転校生/敵の組織と主人公の間を行き来する情報屋/人の姿で里に降りてくる狐の娘
- 外すなら
- いつもは誰より決まりを守る優等生が、一度だけ決まりを裏返して大勢を救う形にする。または、かき回した結果を本人がいちばん怖がっていて、それでもやめられない形にする
- 気をつけたいこと
- 何でも見通している万能の人にしすぎないこと。仕掛けが外れて慌てる、自分が引っかかる場面を一つ入れると、神話のトリックスターらしい愛嬌が出ます
1表の顔人前・ふだん
「ごめーん、文化祭の出し物、くじ引きで決めることにしちゃった! 箱はもう用意してあるから、あとは引くだけ」
実行委員会が始まる前の教室で、手作りのくじ箱を抱えて、悪びれずに笑って
2ほころび素が一瞬見える
「あ、気づいた? 大丈夫、どの班が何を引いても、ちゃんと回るように中身は考えてあるから」
くじの結果がやけにうまく分かれたことに一人だけ首をかしげた友だちに、小声で
3信頼した相手だけ見せると決めた本音
「話し合いだと、声の大きい人が全部持っていくでしょ。くじなら、誰も文句を言えないもんね」
帰り道、自販機の前で二人分のジュースを買い、一本を友だちに放りながら
4独りの時誰にも見せない本音
「変な子って思われてるくらいが、ちょうどいいんだよね。誰も、次の手を読もうとしないから」
誰もいない昇降口で、くじの余りの紙を丸めて、ポケットにしまいながら
男性のトリックスターキャラ
男性のトリックスターは、主人公たちの外側から現れる協力者や、立場の読めない好敵手として描かれます。へらへら笑ってとぼけながら、正面からは勝てない相手を口のうまさと奇策で出し抜く。味方にすると頼もしく、敵に回すと最も厄介。その振れ幅が魅力です。
- よくある形
- どの国にも雇われない流れ者の策略家/主人公たちを試すように何度も現れる謎の男/決まりの抜け道ばかり探す型破りな新入り/いたずらの過去を持つ、手のつけられなかった元問題児
- 外すなら
- だます相手を、いつも自分より強い者だけに決めている形にする。または、昔のいたずらで取り返しのつかないことをして、今はかき回す力を封じている形にする
- 気をつけたいこと
- だましで弱い人を追いつめる場面を、痛快さとして描かないこと。出し抜く相手を、権力や力を持つ側にすると、トリックスターの小気味よさが残ります
1表の顔人前・ふだん
「悪い悪い、敵の倉庫の場所、うっかり向こうの見張りにしゃべっちゃった。いやあ、口が軽くて困るね」
作戦会議に遅れて戻り、仲間に詰め寄られても、頭をかいて笑いながら
2ほころび素が一瞬見える
「なんてね。教えたのは、もう空っぽの古い倉庫のほう。今ごろ見張りは全員、そっちへ走ってるよ」
地図の端を指でとんとたたき、さっきまでと同じ笑顔のまま
3信頼した相手だけ見せると決めた本音
「お前、嘘つく時に右の眉が上がるんだよ。だから俺が全部引き受けてる。眉、直せとは言わない」
作戦がうまくいった夜、たき火の番を代わってくれた相棒にだけ
4独りの時誰にも見せない本音
「さて、次はどんな嘘にしようかな。どうせなら、あとでみんなが笑える嘘がいい」
一人で見張り台に上り、明るくなりはじめた空に向かって大きくのびをして
女性向け作品の男性トリックスターキャラ
女性向けでは、トリックスターは主人公の決まりきった毎日に、軽やかな風を吹きこむ人として描かれます。予想もしない場所に連れ出し、いつもの景色を違って見せる。何を考えているか読めないのに、主人公の危機にだけは必ず先回りしている。その読めなさと確かさの落差が、ときめきになります。
形はさまざまです。決まりごとの多い職場で一人だけ型破りな先輩、主人公の上役をあっさりからかう食えない同僚、敵か味方か名乗らないまま助けに来る謎の人。どの形でも、かき回す先に「この人に、今のままでいてほしくない」という願いが見えると、ただの気まぐれではなくなります。
- よくある形
- 決まりごとの多い職場で一人だけ前例を笑い飛ばす先輩/主人公の上役を軽くあしらう、食えない同僚/敵か味方か名乗らないまま、窮地にだけ現れる人/主人公の予定をひっくり返して、知らない景色へ連れ出す人
- 外すなら
- 誰にでも手の内を見せないのに、主人公にだけは仕掛けの種明かしをしてしまう形にする。または、かき回すのは主人公の周りの決まりだけで、主人公自身の選んだことには一度も手を出さない形にする
- 気をつけたいこと
- 主人公をだまして思いどおりに動かすことを、好意の証として描かないこと。主人公も仕掛けを見抜いたり、乗るかどうかを自分で選べたりすると、対等なかけ合いとして楽しめます
1表の顔人前・ふだん
「あ、ごめん。打ち上げの店、予約が二人分しか取れなかった。というわけで、俺と君の二人で行こうか」
金曜の夕方、帰り支度をする主人公の机に店の地図を置いて、軽く笑って
2ほころび素が一瞬見える
「本当は十人でも入れる店なんだけどね。君、大勢の飲み会だと、ずっと料理を取り分けてるだろ」
店に着き、空席だらけの店内を主人公に見られて、悪びれずに肩をすくめて
3信頼した相手だけ見せると決めた本音
「たまには、取り分けてもらう側でいる日があってもいいと思ってさ。嫌なら、今からみんなを呼ぶよ」
運ばれてきた料理を、先に主人公の皿によそいながら
4独りの時誰にも見せない本音
「二人分しか取れなかった、か。我ながら、もう少しましな言い訳はなかったのかな」
駅で主人公を見送ったあと、改札の前で一人、笑いをこらえて
男性向け作品の女性トリックスターキャラ
男性向けでは、トリックスターのヒロインは、主人公をからかい、試し、思わぬ冒険へ巻きこむ相手として描かれます。敵として現れたかと思えば、次は涼しい顔で隣にいる。何度出し抜かれても目が離せない。その手ごわさと、ふと見せる隙が魅力です。
- よくある形
- 主人公の前に何度も現れて宝を横取りする怪盗/正体を明かさないまま旅に同行する狐の化身/主人公を試すためにわざと難題を出す魔女/敵の陣営にいながら、なぜか情報を流してくる少女
- 外すなら
- 主人公に出し抜かれて本気で悔しがる、負けず嫌いな面を見せる形にする。または、だましの腕は抜群なのに、主人公に対してだけ嘘がつけない形にする
- 気をつけたいこと
- 色仕掛けや弱みにつけこむだましを、ヒロインの魅力の中心にしないこと。知恵と度胸で出し抜く姿を見せると、手ごわい相棒として好かれます
1表の顔人前・ふだん
「ごめんね、生徒会長に、うちの部は廃部でいいですって言っちゃった。あ、ちゃんと書類にもしてきたよ」
部室の扉を開けるなり、主人公に向かって明るく手を振って
2ほころび素が一瞬見える
「ただし、条件つきでね。今月中に部員が五人そろったら、部費を倍にするって。会長、絶対無理だと思ってサインしてた」
青ざめる主人公の前で、書類の控えをひらひらと振って見せて
3信頼した相手だけ見せると決めた本音
「本当は、もう四人まで声をかけてあるの。最後の一人は君が連れてきて。君が誘う人なら、きっと大丈夫」
夕方の部室で、部員名簿の空いた一行を主人公に指さしながら
4独りの時誰にも見せない本音
「廃部って言ったとき、君、本気で慌ててくれたよね。それが見られただけで、今回は大成功かな」
誰もいない廊下で、書類の控えを胸に抱えて、くすっと笑って
トリックスターキャラを書く時のコツと避けたいこと
コツ
- 何をかき回すかを決める:古いしきたり、強すぎる権力、決まりきった毎日、主人公の思いこみ。壊す相手が決まると、トリックスターが物語にいる意味がはっきりします
- 明るさで計算を隠す:「うっかりやっちゃった」と笑ってみせた行動が、あとで計算ずくだったと分かる。軽さと計算の落差が、トリックスターらしい食えなさになります
- 賢さと愚かさの両方を持たせる:鮮やかに出し抜く場面と、自分の仕掛けにはまる場面。両方あると、神話のトリックスターらしい愛嬌が出ます
- 立つ場所を、陣営の少し外に置く:どこにも深く属さないから、内側の人には打てない手が打てます。属しそうで属さない距離が、緊張感を生みます
- かき回したあとに残るものを描く:騒ぎが収まったあと、何が変わったのか。壊したものの代わりに新しい流れが生まれると、ただの厄介者ではなくなります
かき回す理由で変わる見せ方
| かき回す理由 | どう見えるか | 揺らす出来事 |
|---|---|---|
| 退屈が嫌い | 軽やかで気まぐれ | 失いたくない日常ができる |
| 強い者への反骨 | 小気味よい反逆者 | 自分が強い側に立たされる |
| 誰かを変えたい | 食えないのに優しい | 相手が自分の力で変わってしまう |
| 行き場のなさ | どこにも属さない一匹狼 | 帰る場所を差し出される |
| ただ楽しい | 無邪気ないたずら者 | いたずらで本当に人が傷つく |
避けたいこと
- 弱い立場の人をだまして追いつめることを、痛快さとして描くこと。出し抜く相手は、力や権力を持つ側にすると小気味よさが残ります
- 何でも見通している万能の人にすること。読み違えや失敗がないと、トリックスターではなく、ただの全知の黒幕になってしまいます
- 神話の神や伝承の存在を下敷きにする時、今も信仰されている対象であることを忘れて、軽く扱いすぎること
- 有名なトリックスターキャラの名乗りや口ぐせを、そのまま借りること。かき回し方や言葉は、その人だけのものを作ると魅力が増します
トリックスターキャラに合う口調・組み合わせやすい属性
合う口振(口振カルテへ)
トリックスターは立ち位置の属性なので、口振は「どんな顔で人を出し抜くか」で選びます。涼しい顔で受け流すのか、冗談で煙に巻くのか、何を考えているか見せないのか、笑顔の奥で企むのかで、同じ仕掛けでも印象が変わります。
組み合わせやすい属性
トリックスターに飄々を重ねると、何をされても涼しい顔で受け流す、つかみどころのない人に。ミステリアスを重ねれば、正体も目的も見せない謎の協力者になります。天邪鬼を重ねると、言われたことの逆を選んで場をひっくり返す形に。一匹狼を重ねれば、どこにも属さない流れ者になり、策士・参謀を重ねると、奇策で戦局を動かす頭脳派になります。悪気のない騒ぎ役のトラブルメーカーと並べると、わざとかき回す人と、うっかり起こす人の名コンビになります。
ぶつかりやすい属性(あえて使うと面白い)
真面目や優等生は、決まりを大切にする側の属性です。一人に重ねるより、関係性で並べると引き立ちます。決まりの穴を突いてくるトリックスターに、優等生は毎回ふり回される。けれど、決まりだけでは救えないものがあると知った時、二人は一番の協力者になります。
トリックスターの歴史
いたずら者の神や動物は、世界各地の神話や民話に古くから登場します。それを「トリックスター」という一つの型として呼ぶようになったのは、20世紀の神話研究からです。ここでは、主な出来事をまとめます。
年表を開く
英語で trickster が「策略を使う人」の意味で使われ始めます。
北アメリカやアフリカの神話・民話が紹介され、コヨーテや大ガラス、野ウサギ、蜘蛛といったいたずら者の物語が、研究者の注目を集めます。
アメリカの人類学者ポール・ラディンが、北アメリカ先住民のいたずら者の神話をまとめた本を出します。心理学者ユングらの論考も収められ、トリックスターは人の心に深く根ざした型として論じられるようになりました。
文化人類学者の山口昌男が、アフリカの神話を論じる本などを出します。「道化」や「トリックスター」を、中心と周縁をひっくり返す人物として論じ、1970年代以降の日本の芸術や思想に大きな影響を与えました。
小説の序文で、語り手が自分を「トリックスター」と呼ぶ用例が見えます。日本国語大辞典が、この意味の初めての例として挙げています。
人気の少年漫画の野生児のキャラクターを、孫悟空などに連なる「伝統的なトリックスター」として論じる評論が出ます。昔からの型が、今の人気キャラを語る言葉にもなっています。
刀剣を擬人化したゲームのアクション作品で、驚きにこだわり、相手を翻弄する「トリッキーな立ち回り」のキャラクターが紹介されます。女性向けの作品でも、軽やかにかき回す人は人気の形です。
今のトリックスターキャラのイメージ
- 物語を動かすかき回し役:敵とも味方とも言い切れない場所から事件をかき回し、新しい展開のきっかけを作る人物として使われています
- 外側から状況をひっくり返す:どの陣営にも属さないからこそ、味方だけでは打開できない場面を外側から覆す役も担います
- 野生児や暴れ者も:秩序の外から来た型破りな人物が、悪を倒す力になる形は、少年漫画の人気キャラにも受け継がれています
- 軽やかで食えない大人:女性向けの作品では、遊び心と確かな腕を持ち、決まりきった毎日を揺さぶる年上の人物が好まれています
- 響きのよい言葉として:かっこいい響きから、ユニット名やゲームの職業名にも使われています。格闘の作品では、意表を突く技を持つ人物を指すこともあります
- 2025〜2026年に人気の作品では:胡桃(『原神』)やオーエン(『魔法使いの約束』)のように、場をかき回すのに本質を突く形が描かれています
よくある質問
トリックスターキャラとはどういう意味ですか?
決まりや秩序をわざとかき回し、いたずらや知恵で物語を思わぬ方向へ動かす、善とも悪とも言い切れないキャラクターのことです。辞書では、神話や民間伝承に現れるいたずら者で、秩序を壊しながら一方で新しいものを生む者とされています。
トリックスターとトラブルメーカーの違いは何ですか?
わざとかどうかで分かれます。トラブルメーカーは、思いつきや悪ノリで動いた結果として騒ぎが起き、たいてい悪気がありません。トリックスターは、決まりを破ると決めて動き、だましや意表を突く手で秩序をかき回します。かき回したあとに新しい流れが生まれるのも、トリックスターの特徴です。
トリックスターと道化の違いは何ですか?
道化は、おどけたふるまいで人を笑わせる役のことで、トリックスターと重なることが多い言葉です。笑いの奥で秩序をひっくり返し、物語を新しい方向へ動かす力を持つと、トリックスターと呼ばれます。日本では、文化人類学の分野で二つが並べて論じられてきました。
トリックスターは味方ですか、悪役ですか?
どちらとも言い切れないのがトリックスターです。神話では、人間に火や知恵をもたらす英雄でありながら、秩序を壊す厄介者でもあります。物語でも、味方として窮地を救うこともあれば、敵として主人公を出し抜くこともあります。
英語の trickster はどんな意味ですか?
英語では、もともと「策略を使う人」「人をだます人」という意味で、18世紀の初めから使われています。辞書にも「詐欺師。ぺてん師」の意味が残っています。いたずら者の神や英雄を指す意味は、20世紀の神話研究から広まりました。
トリックスターキャラを魅力的に書くコツは?
何をかき回すかを決めることと、賢さと愚かさの両方を持たせることです。鮮やかに出し抜く場面と、自分の仕掛けにはまる場面の両方を描き、かき回したあとに何が変わったかを見せると、ただの厄介者ではないトリックスターになります。
次に読む
参考にした資料
- コトバンク「トリックスター」(デジタル大辞泉・日本国語大辞典:1986年の用例・世界大百科事典)
- Weblio辞書「トリックスター」(実用日本語表現辞典・世界宗教用語大事典)
- コトバンク「山口昌男」(1971年の著作、「道化」「トリックスター」と中心と周縁)
- Online Etymology Dictionary「trickster」(1711年)
- ピクシブ百科事典「トリックスター」(物語での役割、狂言回し、敵とも味方とも言えない立ち位置)
- Wikipedia(日本語版)「トリックスター」
- Wikipedia(英語版)「Trickster」(境界を越える者、各地の例、現代の物語での型)
- Wellcome Collection『The Trickster: A Study in American Indian Mythology』書誌(1956年、ラディン、ケレーニイとユングの論考)
- Wikipedia(日本語版)「ロキ」(変身といたずら、神々を困らせつつ救う)
- Wikipedia(日本語版)「孫悟空」(天界での大暴れ、三蔵法師の弟子として旅をする)
- Wikipedia(日本語版)「パック (妖精)」
- リアルサウンド ブック「『鬼滅の刃』伊之助に通じる、伝統的トリックスターの系譜」(2020年4月20日)
- Wikipedia(日本語版)「狂乱家族日記」(乱崎凶華:トラブルを「宴」と称して騒ぎを起こし、強引に事件を解決へ導く)
- 電撃オンライン『刀剣乱舞無双』鶴丸国永の紹介映像の記事(2022年、人生においての驚きにこだわる、トリッキーな立ち回り)

