サザノノ 性分帖。 > 立ち位置 > お嬢様
お嬢様キャラとは、家柄や財力のある家に生まれ、その育ちのよさや世間とのずれが、ふるまいや考え方ににじむ女性キャラクターのことです。
要点
- もとは他人の娘を敬って呼ぶ言葉です。辞書にはもう一つ、苦労を知らないで育ち、おっとりしている女性という意味も載っています。キャラ属性としてのお嬢様は、こちらの意味に近いものです
- 見分ける条件は3つ。家柄や財力がある・育ちのよさがふるまいに出る・ふつうの暮らしとのずれがある
- 令嬢は、人の娘を改まって敬う言葉で、性格の意味はありません。お嬢様は、身分に加えて育ちから来る人柄まで表す言葉です
- 高飛車な人もおしとやかな人もいます。性格を決めるのは家柄ではなく、その家で何を背負って、どう育ったかです
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お嬢様の意味と語源
お嬢様は、若い女性を表す「嬢」に、敬う気持ちを表す「お」と「様」をつけた言葉です。日本国語大辞典によると、もとは他人の娘を敬って呼ぶ言葉で、江戸時代には武家や豪商の家で使われ、のちに上方の商家にも広がり、今では広く一般に使われています。用例は江戸時代の滑稽本『浮世床』(1813〜1823年)に、お金持ちの家の娘らしい人を指して見られます。少しくだけた「お嬢さん」は、さらに古い1794年の黄表紙に用例があります。
同じ辞書には、もう一つの意味として「苦労を知らないで育ち、きびしさに欠け、おっとりしている女性」が載っています。家柄を表す呼び名が、そこで育った人の性格や雰囲気まで表すようになったわけです。キャラ属性としてのお嬢様は、この二つ目の意味を土台にしています。
創作のお嬢様は、財閥や名家、会社の社長、学校の理事長などの娘として描かれることが多く、大きな屋敷、執事やメイド、ピアノや茶道の習い事がよく添えられます。家の格という物語の中での立場から人柄が生まれる属性なので、このページでは立ち位置の群に入れています。
見た目や設定にも、お嬢様だと一目で伝わる記号があります。金髪の巻き髪やツインテール、扇子を口元に当てる「おーっほっほ」という高笑い、「〜院」「〜宮」「〜寺」「〜園」のような由緒ありげな名字、送り迎えの車と執事。和風の旧家の娘より、洋風の華やかなお嬢様として描かれることが多いのも、創作ならではの特徴です。ただし、記号は「お嬢様らしさ」の入口にすぎません。記号をあえて外し、ジャージ姿で庶民的に暮らすお嬢様が人気を集めることもあります。
口振カルテには同じ名前の口振「お嬢様」があります。「〜ですわ」「わたくし」といった話し方はそちらで扱い、このページでは家柄と育ちから来る性格と立ち位置を扱います。お嬢様言葉を話さないお嬢様も、創作にはたくさんいます。
お嬢様キャラかどうかの見分け方
お金持ちの女性キャラが、すべてお嬢様なわけではありません。お嬢様と呼べるのは、次の3つがそろった時です。
- 家柄や財力がある:本人が稼いだお金ではなく、生まれた家の格や財力を背負っています
- 育ちのよさがふるまいに出る:言葉づかい、立ち居ふるまい、食事の作法、習い事など、家で身につけたものが自然に出ます
- ふつうの暮らしとのずれがある:庶民の当たり前を知らない、お金の感覚が違う、何でも人にしてもらってきた。このずれが、物語の笑いや見せ場になります
令嬢・悪役令嬢・高嶺の花・箱入り娘との違い
お嬢様は、家柄のいい女性を表す言葉とよく混ざります。こう覚えると見分けやすくなります。令嬢は呼び方、お嬢様は人柄まで含んだ呼び名。
| お嬢様 | 令嬢 | 悪役令嬢 | 高嶺の花 | 箱入り娘 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 何についての言葉か | 家柄と、育ちから来る人柄 | 人の娘への改まった敬称 | 物語の中の役回り | まわりとの距離 | 育てられ方 |
| 家柄は必要か | 必要 | 必要(良家の娘) | 必要(貴族・名家) | なくてもよい | なくてもよい |
| 性格の意味 | ある(おっとり、世間知らずなど) | ない | ある(高飛車、意地悪) | ある(近寄りがたさ) | ある(世間知らず) |
| 崩れる瞬間 | 家の外で、自分の力だけが試される時 | (呼び方なので崩れない) | 断罪の場面 | 素の顔を見られた時 | 守ってくれる人がいなくなった時 |
いちばん混ざりやすいのは令嬢です。辞書では、令嬢は「貴人の娘、また、他人の娘を敬っていう語」で、「ご令嬢」のように改まった場で使う敬称です。お嬢様も敬称として使えますが、それに加えて「苦労を知らずに育った女性」という人柄の意味を持っています。「深窓の令嬢」と言えば人柄まで伝わりますが、これは「深窓」が育ち方を表しているからです。キャラ属性として「お嬢様キャラ」とは言っても「令嬢キャラ」とあまり言わないのは、この違いのためです。
悪役令嬢は、お嬢様の中でも、主人公の恋路をじゃまして最後に罰を受ける役回りを指す言葉です。お嬢様は身分と人柄で、悪役令嬢は物語での役目です。高嶺の花は、家柄に関係なく、手の届かない遠さが本体です。お嬢様が高嶺の花として扱われることは多いものの、庶民的で親しみやすいお嬢様もいます。箱入り娘は、家の格より大事に守られて育ったことが軸で、ふつうの家の子にも使えます。
お嬢さん・深窓の令嬢・お姫様・御曹司、言葉の違い
お嬢様キャラの型
お嬢様は、家柄をどう受け止めているか(誇りにするか、重荷にするか、気にしていないか)で型が分かれます。
家柄と実力に誇りを持ち、堂々とまわりを見下ろす型です。主人公の前に高い壁として立ちはだかり、認め合った後は頼れる先輩やライバルになります。たとえば、竜崎麗香(『エースをねらえ!』)がこの型です。ユカリ(『Pokémon LEGENDS Z-A』)もこの型です。
上品で穏やか、誰にでもていねいに接する型です。お金持ちであることを鼻にかけず、まわりの癒やしや相談役になります。たとえば、琴吹紬(『けいおん!』)がこの型です。
大事に育てられすぎて、ふつうの暮らしを知らない型です。コンビニに目を輝かせ、切符の買い方に戸惑う。外の世界を知っていくこと自体が物語になります。たとえば、倉本千奈(『学園アイドルマスター』)がこの型です。
欲しいものは何でも手に入れてきたので、思いついたらすぐ動き、財力でまわりを振り回す型です。本当に欲しいもの(友達、自分を見てくれる人)だけは買えない寂しさを、裏に抱えています。
名家の跡継ぎとして、幼いころから厳しい教育を受けてきた型です。成績も作法も完璧なのに、自分のやりたいことを選べない。家の期待と自分の願いの間で揺れる姿が見せ場になります。
家はとてつもないお金持ちなのに、本人は流行好きでにぎやか、庶民と変わらない感覚で暮らしている型です。ふとした時に出る財力の桁違いさが、笑いになります。たとえば、鈴木園子(『名探偵コナン』)がこの型です。
お嬢様キャラの作り方と台詞例
同じお嬢様でも、キャラの性別や、誰に向けた作品かで「心が動くポイント」が変わります。4つの向きごとに、よくある形と、外し方、台詞例をまとめました。男性の場合は「お坊ちゃま」と呼ばれます。
台詞は「心の距離」の順に4段階で並べています。表の顔 → ほころび(素が一瞬見える)→ 信頼した相手だけ → 独りの時。お嬢様は、表の顔では家にふさわしくふるまい、ほころびで世間とのずれや好奇心がのぞき、信頼した相手には家の重さや本当の望みを打ち明け、独りの時には「家の娘」ではない自分でいたい気持ちを抱えています。話し方は口振カルテで調整できます。
下に行くほど心の距離が近づきます。同じ人物の4つの顔として読んでください。
自分のキャラクターの顔を置くと、下の台詞をその子が話しているように読めます。
性分帖の台詞は、自分で作ったキャラクターにどんな口調や性格が合うかを確かめるためのものです。画像と名前はこの端末にだけ保存され、ほかの属性のページでも同じ子が出ます。
ドラッグで位置を動かせます
お嬢様キャラ(向けを問わず)
お嬢様は、学園ものから冒険もの、日常ものまで、どんな物語にもなじむ属性です。家の格がそのまま物語の舞台装置になり、主人公とは違う世界を見せてくれます。庶民の主人公と並べると、ずれそのものが会話を生みます。
- よくある形
- 名門女子校の生徒会長/財閥の一人娘のクラスメイト/旧家の跡取り娘/主人公の部活を資金で支えるスポンサー
- 外すなら
- 家が没落したのに、お嬢様らしさだけは手放さず、安アパートで優雅に紅茶を淹れている形にする。または、お嬢様であることを隠して、ふつうの学校に通っている形にする
- 気をつけたいこと
- お金持ちだから性格が悪い、お金持ちだから何でも許される、という描き方にしないこと。家柄はきっかけで、その人がどう育ち、何を大事にしているかを描くと、生きた人物になります
1表の顔人前・ふだん
「ごきげんよう。本日の茶話会、皆さまにご満足いただけるよう、精一杯おもてなしいたしますわ」
学園のサロンで、集まった生徒たちに微笑みかけて
2ほころび素が一瞬見える
「こ、これが『立ち食い』……! 立ったまま、食べてもよろしいの? 本当に?」
主人公に連れられて入った駅前のそば屋で、目を輝かせて
3信頼した相手だけ見せると決めた本音
「家の名前を呼ばれない日が、生まれて初めてでしたの。……今日は、何度も『ねえ』って呼ばれて」
帰りの車を断って、主人公と二人で歩く夕暮れの坂道で
4独りの時誰にも見せない本音
「明日も、ちゃんと『家の娘』でいなくちゃ。……でも、今日の帰り道は楽しかったな」
広すぎる自室のベッドで、天井を見つめながら
お坊ちゃまキャラ(向けを問わず)
お嬢様の男性版は「お坊ちゃま」「坊ちゃん」と呼ばれます。世間知らずで甘やかされた少年として、笑いを担うことが多い立ち位置です。大人になり、家業を継ぐ立場が強く描かれると御曹司と呼ばれることが増えます。
- よくある形
- 何でも執事にやらせる金持ちの少年/お金の価値が分からない同級生/主人公の家に入りびたる名家の三男坊/親に決められた習い事ばかりの優等生
- 外すなら
- 甘やかされているように見えて、実は家のことは何でも自分でこなせる、しっかり者の坊ちゃんにする。または、家出して庶民の暮らしを始めたものの、ずれた常識で毎日騒動を起こす形にする
- 気をつけたいこと
- 財力で人を見下す嫌な役だけで終わらせないこと。世間知らずなのは育ちのせいで、本人に悪気がないと分かる場面があると、憎めない坊ちゃんになります
1表の顔人前・ふだん
「遠足のおやつは三百円まで? なるほど、三百万円までなら僕のカードで足りるね」
遠足のしおりを読みながら、真顔でクラスメイトに
2ほころび素が一瞬見える
「……これ、自分で選んで買ったの、初めてなんだ。ちょっと、うれしいかも」
駄菓子屋で、小銭を握りしめて一つずつ選んだ後
3信頼した相手だけ見せると決めた本音
「みんな僕と遊ぶと、家の人に気をつかうんだ。君だけだよ、僕のこと『変なやつ』って笑ってくれるの」
秘密基地にした空き地で、親友と寝転びながら
4独りの時誰にも見せない本音
「大きくなったら、僕もお父様みたいになるのかな。……なりたいかどうかは、誰も聞いてくれないけど」
誰もいない長い食卓で、一人で夕食をとりながら
女性向け作品のお嬢様
少女漫画や乙女ゲームでは、お嬢様はヒロイン本人として、またはヒロインの前に立つライバルとして描かれます。ヒロインの場合は、家の決めた婚約や、身分違いの恋が物語の軸になりやすく、執事や幼なじみの使用人との関係も定番です。
- よくある形
- 政略結婚を拒んで家を飛び出す令嬢/執事に見守られて育ったお嬢様ヒロイン/ヒロインに嫉妬する完璧なお嬢様/身分を隠して下町で働くお嬢様
- 外すなら
- 守られる側だったお嬢様が、家の力を自分の意思で使い、大切な人を守る側に回る形にする。または、ヒロインのライバルだったお嬢様が、恋よりヒロインとの友情を選ぶ形にする
- 気をつけたいこと
- 「お嬢様だから自分では何も決められない」まま終わらせないこと。家に縛られていても、最後に何を自分で選ぶのかを描くと、読者が応援したくなるお嬢様になります
1表の顔人前・ふだん
「茶会の席は、僕の隣で。……心配ない、作法なら僕が全部引き受ける」
学園のサロンで、初めて招かれた主人公の椅子を自ら引いて
2ほころび素が一瞬見える
「見なかったことにしてくれ。……泣いてなどいない。温室の花粉だ」
庭の温室で、主人公と鉢合わせして目をそらしながら
3信頼した相手だけ見せると決めた本音
「家のためにいい息子でいるのは、慣れている。一度だけ、僕のために選ばせてほしい。君の隣にいることを」
夜会を抜け出した先のバルコニーで、主人公の目をまっすぐ見て
4独りの時誰にも見せない本音
「名も家も置いていけたら、僕はどんな男になっていたんだろう」
鏡の前で、タイピンとカフスを一つずつ外しながら
男性向け作品のお嬢様
男性向けでは、ふつうの主人公の前に現れる、住む世界の違うヒロインとして描かれることが多い属性です。高飛車に見えて実はさみしがり、完璧に見えて実は世間知らず、という落差が魅力の中心になります。主人公だけが知っている素の顔が、特別な関係の証になります。
- よくある形
- 主人公の学校に転校してきた財閥の令嬢/主人公が世話係を任されたお嬢様/庶民の暮らしに興味津々の箱入り娘/高笑いするのにすぐ涙目になるライバル
- 外すなら
- 主人公を振り回すお嬢様が、実は主人公よりずっと努力家で、家の期待に応えるために睡眠時間を削っている形にする。または、お嬢様がゲームや格闘技など、意外な趣味に本気で打ち込んでいる形にする
- 気をつけたいこと
- 財力で主人公を囲い込む関係を、そのまま理想の恋として描きすぎないこと。お金ではなく、二人で過ごす時間や対等な言い合いが関係を深める描き方にすると、気持ちよく読めます
1表の顔人前・ふだん
「おーっほっほっ! 庶民のお弁当とやら、わたくしが味見して差し上げてもよろしくてよ!」
昼休みの教室で、主人公の机に扇子を突きつけて
2ほころび素が一瞬見える
「……なにこれ、おいしい。シェフの料理より、ずっと……あっ、い、今のは聞かなかったことに!」
卵焼きを一口食べて、思わず素の声が出て
3信頼した相手だけ見せると決めた本音
「お昼をだれかと食べたこと、ありませんでしたの。だから、明日も……その、ご一緒してもよろしくて?」
放課後、校門で主人公を待っていて
4独りの時誰にも見せない本音
「料理長に、卵焼きの焼き方を聞くとしましょう。……わたくしが庶民の味を極めて、あの人を驚かせてやるだけですわ」
屋敷の厨房の前を、何度も行ったり来たりしながら
お嬢様キャラを書く時のコツと避けたいこと
コツ
- 家の「中身」を一つ決める:財閥なのか、旧家なのか、新興の会社なのか。家業と家風が決まると、身についている作法や価値観が自然に決まります
- 家柄を本人がどう思っているかを決める:誇りにしているのか、重荷なのか、気にしていないのか。型はここで分かれます
- ずれは、一つの場面で具体的に見せる:「世間知らず」と説明するより、コンビニのレジの前で固まる姿を一つ描くほうが伝わります
- お金では手に入らないものを一つ持たせる:友達、自由、自分を見てくれる人。それを求める気持ちが、本音の台詞を生みます
避けたいこと
- お金持ちは性格が悪い、庶民は心がきれい、という決めつけで人物を分けること。どちらの側にも、いろいろな人がいる描き方にしたいところです
- 使用人や執事を、人格のない便利な道具として扱うこと。お嬢様を見守る人にも、その人なりの考えや暮らしがあります
- 「〜ですわ」「おーっほっほ」だけでお嬢様らしさを表そうとすること。話し方は飾りで、育ちは考え方や判断の仕方に出ます
- 財力で問題をすべて解決させること。お金で片づかない問題に向き合う時、お嬢様の本当の人柄が見えます
お嬢様に合う口調・組み合わせやすい属性
合う口振(口振カルテへ)
お嬢様は、「育ちのよさを、どう言葉に出すか」で口振を選ぶと書きやすくなります。いちばん素直なのは同じ名前の口振「お嬢様」ですが、上から見下ろすのか、ていねいに包むのか、のんびり話すのかで、同じお嬢様でも型がはっきり変わります。
組み合わせやすい属性
お嬢様にツンデレを重ねると、高飛車な態度の裏に照れを隠す、王道の金髪お嬢様に。おっとりを重ねると、誰にでもやさしい癒やしのお嬢様になります。天然を重ねれば、世間とのずれがそのまま笑いになる、憎めない箱入り娘に。高嶺の花を重ねると、学園中の憧れを集める完璧なお嬢様になります。寂しがりを重ねると、広い屋敷で一人きりの時間を過ごしてきた、本当は誰かといたいお嬢様に。見栄っ張りを重ねると、家が傾いてもお嬢様らしさを崩さない、意地と誇りのお嬢様になります。
ぶつかりやすい属性(あえて使うと面白い)
苦労人は、辞書のお嬢様(苦労を知らないで育った女性)と、言葉の上では正反対です。だからこそ、家が没落して苦労を知ったお嬢様や、家の重さに人知れず苦労しているお嬢様として重ねると、深みのある人物になります。一般人も正反対の立ち位置ですが、お嬢様の隣に置くと、ずれを指摘するツッコミ役として最高の相方になります。
お嬢様キャラの歴史
お嬢様という呼び名は江戸時代から使われ、明治以降、女学校と少女小説、そして漫画やアニメの中で、今のキャラ像が形づくられてきました。主な出来事をまとめます。
年表を開く
随筆に「お嬢様」という呼び方が記録されます。辞書によると、江戸の武家や豪商の家で、他人の娘を敬って呼ぶ言葉として使われていました。
滑稽本『浮世床』に、お金持ちの家の娘らしい人を指す「おぜうさま」の用例が見られます。
女学生の間で「よくってよ」「〜だわ」といった言葉づかい(てよだわ言葉)が広まります。当時の文学者や教育者からは下品な言葉とされ、新聞にも、女学生の言葉づかいを嘆く記事が載りました。
てよだわ言葉は、上流階級の子女が通う女学校などで定着し、やがて「上品なお嬢様の言葉」として受け取られるようになります。下品とされた言葉が、時代を経て品のよさの記号になったわけです。
少女漫画で、「〜てよ」「〜ですわ」と話す気高いお嬢様が、主人公の憧れの先輩やライバルとして描かれます。言葉づかいの研究では、創作のお嬢様言葉の代表的な例として取り上げられています。
池袋に、執事が客を「お嬢様」と呼んでもてなす執事喫茶が開店し、「お嬢様」が自分もなれる憧れの立場として話題になります。
ネット小説から悪役令嬢ものが広がり、高飛車なお嬢様を主人公にした物語が一つのジャンルになります。お嬢様を、ライバル役ではなく、内面を持つ主役として描く作品が増えました。
今のお嬢様キャラのイメージ
- 高飛車とおしとやかの二本柱:おっとり清楚なお嬢様と、高飛車に見えてツンデレなお嬢様が、お嬢様キャラの二大代表です
- 「ですわ」は記号として生きている:現実でお嬢様言葉を話す人はほとんどいませんが、創作では一言でお嬢様だと伝わる記号として、今も使われています。あえて話さないお嬢様も増えています
- ギャップが主役:完璧なのに世間知らず、高笑いするのに涙もろい、お嬢様なのにゲームに本気。期待されるお嬢様像とのずれが、魅力の中心になっています
- 家に縛られる側の物語:家の決めた婚約や跡継ぎの重圧に向き合い、自分の生き方を選ぶお嬢様が、共感を集めています
- 悪役から主役へ:悪役令嬢ものの広がりで、かつて主人公の敵だった高飛車なお嬢様が、主人公として愛されるようになりました
- お金の使い方に人柄が出る:財力そのものより、そのお金を誰のために、どう使うかで、お嬢様の人柄が描かれるようになっています
- 2025〜2026年に人気の作品では:ユカリ(『Pokémon LEGENDS Z-A』)や倉本千奈(『学園アイドルマスター』)のように、公式が「お嬢様」と言い切るキャラがそのまま人気です
よくある質問
お嬢様とはどういう意味ですか?
もとは他人の娘を敬って呼ぶ言葉で、江戸時代の武家や豪商の家で使われていました。辞書にはもう一つ、「苦労を知らないで育ち、おっとりしている女性」という意味も載っています。キャラ属性としては、良家に生まれ、育ちのよさや世間とのずれが表れる女性キャラを指します。
お嬢様と令嬢の違いは何ですか?
令嬢は、人の娘を改まって敬う呼び方で、性格の意味はありません。お嬢様は敬称でもありますが、「苦労を知らずに育った女性」という人柄の意味も持っています。キャラ属性として「お嬢様キャラ」と言うのは、この人柄の意味があるからです。
お嬢様と悪役令嬢の違いは何ですか?
お嬢様は身分と人柄を表す言葉です。悪役令嬢は、お嬢様の中でも、主人公の恋路をじゃまして最後に罰を受ける役回りを指します。悪役令嬢はお嬢様の一部ですが、お嬢様の多くは悪役ではありません。
お嬢様キャラの男性版は何と呼びますか?
「お坊ちゃま」「坊ちゃん」と呼ばれます。世間知らずで甘やかされた少年として描かれることが多く、大人になって家業を継ぐ立場が強く描かれると「御曹司」と呼ばれることが増えます。
お嬢様の口調と、お嬢様の性格は同じですか?
同じではありません。「〜ですわ」と話していてもお嬢様ではないキャラもいますし、ふつうの話し方をするお嬢様もたくさんいます。このページは立ち位置と性格としてのお嬢様を扱い、話し方は口振カルテの口振「お嬢様」で扱っています。
魅力的なお嬢様キャラを作るには?
家の中身と、本人が家柄をどう思っているかを一つずつ決めることです。そのうえで、世間とのずれを具体的な場面で一つ見せ、お金では手に入らないものを求める気持ちを持たせると、記号だけではないお嬢様になります。
次に読む
参考にした資料
- コトバンク「御嬢様」(精選版 日本国語大辞典:他人の娘の敬称、江戸の武家・豪商の家で使用、撈海一得1771年、浮世床1813〜1823年の用例、苦労を知らないで育ちおっとりしている女性、お嬢さん1794年の用例)
- コトバンク「御嬢さん」(デジタル大辞泉:お嬢様よりくだけた言い方、若い女性への呼びかけ)
- コトバンク「御嬢」(精選版 日本国語大辞典:上流・中流家庭の娘への尊敬語、1813年の用例)
- Weblio辞書「令嬢」(貴人の娘、また他人の娘を敬っていう語)
- ニコニコ大百科「お嬢様」(萌え属性としての特徴、性格による3分類、お嬢様言葉の成り立ち)
- 渋谷倫子「日本語における『近代的』セクシュアリティの形成」『ジェンダー史学』2号、2006年(明治の女学生のてよだわ言葉)
- 金水敏『ヴァーチャル日本語 役割語の謎』岩波書店、2003年(お嬢様ことばは女学生ことばとして広まった、明治20〜40年ごろは下品とされた、1970年代の少女漫画の例)
- villagepump「お嬢様言葉の歴史について」(森銑三『明治東京逸文史』が引く読売新聞1905年3月16日「女学生と言語」)
- 文春オンライン 春日太一「泥沼スクリーン」(竜崎麗香はテニス部の絶対的なエース)
- 財経新聞「新・エースをねらえ! COMPLETE DVD BOOK」告知(容姿・実力・家柄と全てを兼ね備える先輩)
- BAILA「エースをねらえ!」紹介(日本庭球協会理事を父に持つ)
- トイピープル 琴吹紬フィギュア紹介(お金持ちのお嬢様、社長令嬢、お茶菓子を提供)
- みんなのランキング「お嬢様キャラ美少女ランキング」(投票参加者935人、2026年7月更新。おっとり清楚・高飛車でツンデレ、「〜ですわ」口調と財力、鈴木園子は流行に敏感でミーハー)
- みんなのランキング「けいおん!キャラランキング」(キーボードを務めるおっとりしたお嬢様、琴吹紬)
- 現代ビジネス「20年前に起きた『執事ブーム』とはなんだったのか」(2006年、池袋の執事喫茶)
- ciatr「お嬢様キャラといえばツンデレ?天然?」(プライドが高くわがまま、世間の常識に疎い、という王道の性格タイプ)

