小説表現「哂う、咲う、呵う、嗤う」の違い(辞書解説URLと例文あり)
嗤う(嘲笑う)、哂う、咲う、呵うの使い分け、使い方(辞書解説URLと例文あり)
例文と説明について
笑うには、色々な漢字が当てられているので、この使い分けの説明と、小説的な表現での例文を記載させていただいております。
簡単な文章表現を添えながら、違いを行っていきたいと思い、
哂う赤鬼、呵う青鬼、咲う赤鬼を描写して、その違いを書きました。(原作:泣いた赤鬼)
泣いた赤鬼説明(例文の事前説明のみ)
今回は、泣いた赤鬼を例文に使う為、簡単な説明を載せます。
①赤鬼は人間の友達が欲しい(哂う、嗤う)
②人間に怖がられて、逃げられてしまう
③青鬼に相談をする(呵う、嗤う)
④青鬼が悪い鬼のフリをして、人間を襲う
⑤赤鬼が人間を助けて、人間の友達が出来る(咲う)
⑥「人間に怖がられてしまうから」と青鬼は姿を消す
⑦赤鬼、後悔する
「わらう」の説明を記載した後に、
①、③、④の場面から、少しだけ例文として記載していきます。
(文章描写としての戯れの為、性格の脚色強めです。原作こそ、最高ですのでぜひ)
「わらう」使い方説明一覧
嗤う(嘲笑う)
◎辞書の意味
嘲笑う、笑う
おまけ
嘲る(あざける)の辞書(1.の意味)
嘲りは人を見下す、蔑むという意味である。
◎一般的な使い方
小説『嗤う伊右衛門』が有名な使い方。
ミステリー小説のタイトルに多く使われる言葉である。
『嗤う淑女』、『嗤う名医』など、嗤っていたら大体ミステリー小説だ。(スリラー小説の場合もある)
◎嗤う特徴としては
・ヴィランの蔑み、悪役っぽい笑い方
・相手のことを馬鹿にする態度
・ガ行、ダ行(濁点行)、ヒャを多様する
・指をさして笑う
哂う
◎辞書の意味
1.笑う。嘲笑う。2.微笑む
辞書では「あざわらう」も「微笑む」もあって、
どちらか分からない…と言う人もいるが、「哂う」はこれの組み合わせである。
◎哂う特徴としては
「寂しそうに、自分のことを嘲て微笑む。」=哂う
「大事な親友の死を電報で聞き、「馬鹿だな」とふっと微笑んだ」=哂った
この哂うは、相手のことを思っている印象が強い笑い方で、
「あははっ」ではなく、「ふっ、」「ふふっ、」という笑い方が多い
一般的なイメージが「嘲笑う」意味で使う方が多い為に、
この哂うを使う時は、「寂しそうに」等の言葉を補った方が良い。
◎一般的な使い方
「○○を哂うスレ」の哂うでもあり、その使い方通り、嘲りの意味もある。
(使用頻度が高い『晒す』という言葉と、見た目が近いこともあり、
纏めスレでは浸透しやすかったと思われる)
◎おまけ 語源から、意味を読み取る
西という意味の言葉の意味合いが寂寥とした感覚のある言葉でもある。
咲う
◎辞書の意味
→笑うと一緒
(1)喜び・うれしさ・おかしさ・照れくささなどの気持ちから、顔の表情をくずす。また、そうした気持ちで声を立てる。
(2)あざけりばかにする。嘲笑する。
(3)あまりひどくて、相手にするのもばかばかしいほどである。
(4)花のつぼみが開く。また、果物が熟して裂ける。
(5)春になって、芽が出たり花が咲いたりして、明るいようすになる。俳句など、文学的表現に用いる。
(6)ゆるんだりほどけたりする。ほころびる。また、足どりがしっかりしなくなる。
小学館デジタル大辞泉
(1)の表現と、(5)の表現を織り交ぜた感覚で使うと丁度良い「咲う」になる。
◎一般的な使い方
ここ数年で浸透してきた笑い方の表現で、俳諧ではよく使われていた表現。
少女の微笑みとして使われることが多い
ふりがなが付けれない場面では使わない方が良かったが、読める人が増えてきた印象がある。
◎おまけ 使用されているタイトル
サブカルチャーとして有名なのは、この2つが挙げられる。
『人間に恋した鬼は咲う』
pixivコミックス
ニトロプラス原作のゲーム
ネタバレ防止の為に避けたが、少年ジャンプの漫画ハイキュー21巻の台詞でも使用されていた表現である。
呵う
◎辞書の意味
日本では、一般的には使わない。
この記事を書くまで、熟語以外では見たことすらなかった文字
呵責(かしゃく)の「呵」が一番有名。
擬音語として、「カカカ!」や「カッカッカ!」と笑う人物の
「カ」は、この「呵」。
呵々大笑という四字熟語もあり、
大きい声で男性的に笑う表現として使われる。
その他中国での笑いの表現として、
哈哈(haha) 大笑い はっはっは!
呵呵(hehe) 普通の笑い ははは
嘿嘿(heihei) 何かを企んだ雰囲気の笑い へっへっへっ
咯咯(gege) くすぐったい感じ けらけら
嘻嘻(xixi) にこにこした笑い ふふふ
嘎嘎(gaga) 豪快な笑い がっはっは
嗤嗤(chichi) 吹き出す笑い ぷ
などがある。
Yahoo!知恵袋より
以下、例文パート
哂う紅鬼(①例文)
自らの角を壊す勇気さえない紅鬼は、自分を哂って、静かに泣いた。
角が無くなったにしても、自分が人間になれるわけでもない。
それでも、楽しそうな輪に入りたかった。ただ好きだと伝えたかった。
悪役が好きを欲張るのはいけないことだ。
それなのに、諦めるのが怖くて、嫌だった。
生を哂った。自分の弱さを哂った。人をも、哂ってしまいそうになる。
紅鬼は、願うように、諦めきったように、哂った。
呵う青鬼(③例文)
瑠璃色の着物を袖に通し、煙管を吹かせた青鬼は呵々、と笑った。
嫋やかな赤鬼の嘆きは、自分にとっては割とどうでもいいのだ。
喰らう者を何故、愛そうとするのかが分からない。
その考えの深みに嵌ってしまえば、一生餓死してしまうだろう。
それでも、この紅色の怪物が、そのどうでも良い物を切望している様は、愉しい。
嗤い種が転がっているのであれば、それに水をやって、花を咲かせるのも一興、
青鬼は呵って、弱者と戯れたい我が友人に手を貸すことにした。
「一ツ、提案があるがどうかね?」
つい嘲笑ってしまう表情を煙管の煙で隠して、掠れた声で誘う。
咲う紅鬼(⑤例文)
春の穏やかな陽光を浴びて、紅鬼は咲った。
桜の蔭から見ていた人集りの中心に、自分の様な怪物がいる。
夢のような優しい空間だ。
人の手からもらった春酒に酔い、微睡んで、ゆるりと瞼を落とす。
こうやって人に身体を預けて眠ることさえも、出来るようになっている。
――居場所をくれた粋と酔を愛する瑠璃色の鬼に、会っていない。
一瞬浮かんだ考えも霧散して、少しずつ、意識を手放していった。
まとめ
相手を蔑むイメージを与えたかったら、嗤う
自嘲したり、悲し気に「馬鹿だな、」呟く印象を与えたかったら、哂う
天使が微笑む様に、柔らかで優しい印象を与えたかったら、咲う
男性的な明朗で、豪胆な笑い方のイメージを与えたかったら、呵う
後は自分の文章の音や感覚に合わせて、自由に使ってみてくださいませ
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